UAEのラクダレースでは、騎手がロボットだ
アラブ首長国連邦の伝統スポーツ、ラクダレース。かつて子どもの騎手が問題になり、2005年以降はロボット騎手に置き換わった。伝統と技術と人権が交差するUAEのスポーツ文化を読む。
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直線コースを時速40kmで疾走するラクダの背中に、人間は乗っていない。代わりに小型のロボットが取り付けられ、リモコンで鞭を振る。コースの外では、オーナーたちがSUVでラクダと並走しながらスマホでロボットを操作している。
これが2026年現在のUAEのラクダレースだ。
ベドウィンの伝統
ラクダレースはアラビア半島のベドウィン(砂漠の遊牧民)の伝統に根差している。砂漠でラクダは移動手段であり、財産であり、地位の象徴だった。どのラクダが速いかを競うことは、部族のプライドに直結していた。
UAEでは、ラクダレースは国技に近い位置づけだ。レースシーズンは10月から翌年4月(冬季)で、全国に専用のレース場がある。アル・マルムーム(ドバイ近郊)、アル・ワスン(アブダビ近郊)などが代表的だ。
レースに出走するラクダ1頭の価値は、血統と実績によって大きく異なる。良血統のレース用ラクダは数百万AED(数千万〜数億円)で取引されることもある。優秀な繁殖用のラクダはそれ以上だ。
子ども騎手問題とロボットへの転換
ラクダレースの暗い歴史がある。かつて騎手を務めていたのは、南アジアやアフリカから連れてこられた幼い子どもたちだった。軽い体重が有利なため、4〜6歳の子どもが騎手として使われ、人身売買や児童虐待が国際的に批判された。
2005年、UAE政府はラクダレースでの子ども騎手の使用を法律で禁止した。同時にロボット騎手の開発・導入を進め、数年以内にすべてのレースでロボットが標準になった。
ロボット騎手は、重量約3kgの小型装置だ。リモートコントロールで鞭を振る機能があり、オーナーがSUVでコース脇を並走しながら操作する。GPSとカメラが搭載されたモデルもある。
この転換は、UAEの「問題を技術で解決する」アプローチの典型例だ。伝統を守りつつ、人権問題を解消し、テクノロジーで代替する。批判への対応としては世界的に見ても早く、効果的だった。
レースの構造
ラクダレースのレースは、直線コース(5〜10km)で行われる。スタートラインにラクダが並び、一斉にスタートする。ゴールまでの時間を競う。
レースのカテゴリはラクダの年齢・性別で分かれている。主要なフェスティバル(たとえばアル・マルムームのヘリテージ・フェスティバル)では数百頭が出走し、賞金総額は数千万AEDに達する。賞品には高級SUV、賞金、トロフィーが含まれる。
観戦は無料で、外国人も入場できる。レース場にはスタンドがあるが、多くの地元民はSUVでコース脇に陣取り、ラクダと一緒に走る。この「並走」がラクダレースの独特な光景を作っている。
在住日本人の体験
ドバイやアブダビに住む日本人がラクダレースを観に行く機会は、意外とハードルが低い。
冬季(10〜4月)の金曜・土曜の早朝にレースが行われることが多い。アル・マルムームのレース場はドバイ中心部から車で約30分。入場無料。駐車場も無料。
朝6〜7時にスタートするレースが多いため、早起きが必要だが、砂漠の朝の空気は心地よい。ラクダが一斉に走り出す瞬間のインパクトは大きく、SUVの群れがラクダと並走する光景は他の国では見られないものだ。
レース場の近くにはラクダの厩舎エリアがあり、トレーニング中のラクダを見ることもできる。ラクダは見た目に反して時速60km以上出せる(短距離)。あの長い脚のストライドが生み出す速度は、実際に見ると予想を超える。
砂漠の伝統がロボットと融合した、UAEらしいスポーツだ。
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