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ドバイで死んだらどうなるのか——誰も語らない駐在生活の最終章

UAEで在住者が亡くなった場合の手続き、遺体搬送、費用、保険の対応。誰も事前に考えないが、知っておくべき現実を整理する。

2026-05-17
UAEドバイ死亡手続き遺体搬送駐在

この記事の日本円換算は、1AED≒42円で計算しています(2026年4月時点)。為替は変動するので、現地通貨(AED)の金額を基準にしてください。

ドバイの駐在員向けオリエンテーションでは、住居の探し方、学校の選び方、運転免許の取り方を教えてくれる。「ドバイで亡くなった場合の手続き」を教えてくれるオリエンテーションは、まず存在しない。

しかしUAEの在住邦人は約5,000人。統計的に、毎年数名がUAE滞在中に亡くなっている。交通事故、急病、労災——原因はさまざまだ。

誰にでも起こりうることなのに、誰も準備していない。

死亡から遺体搬送までの流れ

UAEで日本人が亡くなった場合、以下の手続きが必要になる。

1. 医療機関での死亡確認。 病院で亡くなった場合は医師が死亡証明書を発行する。病院外で亡くなった場合(自宅、事故現場等)は、警察が介入し、検死(Forensic Medicine)が必要になることがある。

2. 警察の死亡報告書(Police Report)。 不審死や事故死の場合は警察の調査が入る。自然死であっても、病院外で発見された場合は警察報告書が必要。

3. 死亡証明書の取得。 Dubai Health Authority(DHA)またはAbu Dhabi Health Authority等から正式な死亡証明書を取得する。

4. 在ドバイ日本国総領事館への届出。 日本人の死亡は総領事館に届け出る。「死亡届」を提出し、日本の戸籍に死亡を記録する手続きが行われる。

5. 遺体の処理。 現地で埋葬するか、日本に搬送するかを選択する。

遺体搬送の費用

多くの日本人遺族は遺体を日本に搬送することを選ぶ。その費用は想像以上に高い。

項目費用(目安)
エンバーミング(防腐処理)3,000〜5,000AED(約126,000〜210,000円)
航空輸送用棺(亜鉛棺)2,000〜4,000AED(約84,000〜168,000円)
航空運賃(貨物扱い)10,000〜20,000AED(約420,000〜840,000円)
現地葬儀社手配5,000〜10,000AED(約210,000〜420,000円)
書類手続き代行2,000〜5,000AED(約84,000〜210,000円)

合計で22,000〜44,000AED(約92万〜185万円)。これに日本側の葬儀費用が加わる。

保険でカバーされるか

会社の駐在保険。 大手企業の駐在パッケージに含まれる海外旅行保険・駐在員保険は、遺体搬送費用をカバーしていることが多い。ただし上限額がある場合がある。赴任前に保険証券を確認しておく必要がある。

個人の海外旅行保険。 死亡時の遺体搬送をカバーする保険とカバーしない保険がある。「治療費」はカバーするが「遺体搬送費」は別扱いのプランが多い。

現地の医療保険。 UAEの法定医療保険(Essential Benefits Plan等)は遺体搬送をカバーしない。

保険の種類によって100万円以上の持ち出しが発生するかどうかが変わる。渡航前の保険選びは、文字通り生死にかかわる判断だ。

イスラム圏での埋葬

UAEで現地埋葬を選ぶ場合、非ムスリム用の墓地がある。ドバイではアル・クォーズ(Al Quoz)地区に非ムスリム墓地がある。

イスラム法では死後24時間以内の埋葬が原則だが、これは非ムスリムには適用されない。ただし、UAEでは遺体の長期保管施設が限られるため、搬送を選ぶ場合でも迅速な手続きが求められる。

火葬はUAEでは一般的ではない。ヒンドゥー教徒向けの火葬施設が一部存在するが、日本式の火葬を行う施設はない。火葬を希望する場合は、遺体を日本またはインド等に搬送する必要がある。

残された家族のビザ問題

UAEの在住ビザは、スポンサー(雇用主または家族のビザ保証人)に紐づいている。世帯主が死亡した場合、配偶者と子どものビザが30日以内に失効するケースがある。

この期間内にビザの切り替え(自身の雇用ビザへの変更、または出国)を行わなければならない。配偶者が無職の場合、UAEに滞在し続けることが法的に困難になる。

悲しみの中で30日以内にビザ手続きを完了するのは精神的にも事務的にも大きな負担だ。会社の人事部門が対応するケースが多いが、個人事業主やフリーランスの場合は全てを自分で処理する必要がある。

準備できること

「海外で死ぬ準備」と言うと大げさに聞こえるが、実務的にやっておくべきことはシンプルだ。

保険証券のコピーを家族と共有しておく。日本の総領事館の連絡先を家族に伝えておく。遺言書を作成しておく(UAEの法律と日本の法律の両方を考慮したもの)。銀行口座やパスワードの情報を信頼できる人に託しておく。

考えたくないことだからこそ、元気なうちに10分だけ時間を使う価値がある。


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