エミラティ料理を食べたことがないドバイ在住者は多い
UAE発祥のエミラティ料理——ハリース、マチブース、ルガイマート。レバノン料理やインド料理に埋もれて目立たないが、断食月ラマダンにその真価がわかる。砂漠の食文化を紹介する。
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ドバイには200カ国の料理が集まっている。しかし「UAE料理のレストラン」を探すと、意外に見つからない。
人口の約90%が外国人のUAEでは、レバノン料理、インド料理、パキスタン料理、フィリピン料理——移民が持ち込んだ食文化がレストランの主流だ。エミラティ(UAE国民)の料理は、家庭で食べられるものであり、外食産業にはあまり出てきていなかった。
しかし近年、エミラティ料理を提供するレストランが少しずつ増えている。そして一度食べると、砂漠の気候と遊牧民の生活が生んだ合理的な食の体系が見えてくる。
代表的なエミラティ料理
ハリース(Harees)。 小麦とラム肉(または鶏肉)を長時間煮込んでペースト状にしたもの。見た目はお粥に近い。味はシンプルで、肉の旨味と小麦の甘みだけ。バターやギーをかけて食べる。ラマダンのイフタール(断食明けの食事)の定番で、消化に良く、断食後の体に負担が少ない。
マチブース(Machboos)。 スパイスで炊いた米の上にラム肉、鶏肉、または魚をのせた料理。インドのビリヤニに近いが、使うスパイスが異なり、ドライレモン(ルーミー)が特徴的な酸味を加える。UAEの「国民食」と呼べる一皿だ。
サリード(Thareed)。 薄いパン(レガーグ)を敷き、その上にトマトベースの肉と野菜のシチューをかけた料理。パンがシチューの水分を吸って柔らかくなる。預言者ムハンマドが好んだ料理とされ、ラマダン中に特に食べられる。
ルガイマート(Luqaimat)。 揚げドーナツにデーツシロップ(ディブス)をかけたデザート。外はカリッ、中はもちもち。1皿10〜20AED(約420〜840円)。甘さは控えめで、日本人にも食べやすい。
カラク・チャイ(Karak Chai)。 エミラティ料理というよりUAEの国民的飲料。紅茶を練乳とカルダモンで煮出したミルクティー。路上のカフェテリア(カファテリア)で1杯1〜3AED(約42〜126円)。毎朝これを飲まないと1日が始まらないという人が多い。
砂漠の食の論理
エミラティ料理を理解するには、砂漠の制約を考える必要がある。
保存性。 高温で食材が腐りやすい環境では、乾燥・塩漬け・発酵が必須だった。デーツ(ナツメヤシの実)は天然の保存食であり、砂漠の旅の携行食だった。乾燥レモン(ルーミー)は柑橘系の酸味を長期保存する知恵だ。
タンパク源。 砂漠では大型の家畜を多数飼育できないため、ラクダの乳(ラバン)と肉、山羊の乳と肉、魚(沿岸部)が主なタンパク源だった。ラクダのミルクは牛乳より鉄分とビタミンCが多く、砂漠の環境に適応した栄養源だ。
米。 UAEで米が主食になったのは、インドやパキスタンとの交易があったからだ。バスマティ米は輸入品であり、米料理の存在自体がこの地域の交易ネットワークを示している。
ラマダンとエミラティ料理
エミラティ料理が最も前面に出るのは、ラマダン(断食月)だ。
日中の断食が終わるイフタール(日没後の食事)では、デーツと水で断食を解いた後、ハリース、サリード、マチブースが順に出される。家族が集まり、大量の料理を囲む。ラマダンの食費は通常月の2〜3倍になるとも言われる。
ラマダン中、ドバイやアブダビのホテルは「イフタール・ブッフェ」を提供する。1人100〜300AED(約4,200〜12,600円)で、エミラティ料理を含む中東料理のフルコースが楽しめる。非ムスリムの外国人もイフタール・ブッフェに参加でき、エミラティ料理を体験する最も手軽な方法のひとつだ。
エミラティ料理を食べられる場所
アル・ファナール(Al Fanar)。 ドバイのドバイ・フェスティバル・シティ内にあるエミラティ料理レストラン。内装が1960年代のUAEの家庭を再現しており、料理とともに文化体験ができる。マチブースは45〜65AED(約1,890〜2,730円)。
アラビアン・ティーハウス(Arabian Tea House)。 バール・ドバイのアルファヒーディ歴史地区にあるカフェ。エミラティの伝統的な料理と中東のスイーツが楽しめる。カラク・チャイが人気。
エミラティ料理は、ドバイの華やかな国際料理シーンに埋もれがちだが、この土地の原点を味わえる食だ。砂漠と海と交易が作った料理の論理は、一度知ると忘れがたい。
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