UAEの退職金「グラチュイティ」の仕組み——勤続年数で変わる計算式を読み解く
UAEには公的年金がない代わりに、退職時に勤続年数に応じた一時金(グラチュイティ)が支払われる。基本給ベースの計算方法と、知らないと損する注意点を整理する。
この記事の日本円換算は、1AED≒44円で計算しています(2026年6月時点)。為替は変動するので、現地通貨(AED)の金額を基準にしてください。
UAEで働く外国人には、日本のような企業年金や厚生年金は基本的にありません。その代わりにあるのが「エンド・オブ・サービス・グラチュイティ」、いわゆる退職一時金です。会社を辞めるとき、勤続年数に応じてまとまった金額が支払われます。
これは慣習ではなく、UAE労働法で定められた権利です。仕組みを理解しておくと、転職や帰国のタイミングを考えるときの判断材料になります。
計算のベースは「基本給」だけ
最初に押さえておきたいのは、グラチュイティの計算に使われるのは「基本給(Basic Salary)」だけだという点です。住宅手当・交通手当・通信手当などのアローワンスは含まれません。
UAEの給与は、基本給とアローワンスに分かれているのが一般的です。総支給額が同じでも、基本給の比率が低く設定されていると、退職金は小さくなります。雇用契約を結ぶときに、この内訳を確認しておく価値はあります。
勤続年数で変わる支給率
一般的な計算式は、勤続1〜5年の部分が「基本給21日分×年数」、5年を超える部分が「基本給30日分×年数」とされています(2026年時点の労働法に基づく一般的な理解で、制度は変更され得ます)。
つまり、長く勤めるほど1年あたりの支給率が上がる累進構造になっています。日本の退職金が長期勤続を優遇するのと方向性は似ていますが、UAEの場合は外国人労働者の流動性が高い前提で設計されている点が違います。
早く辞めると減額される場合がある
無期雇用契約の場合、自己都合で1年未満に辞めると原則として支給対象外、という扱いになることがあります。短期で転職を繰り返すと、グラチュイティはほとんど積み上がりません。
逆に言えば、この制度は「中期間(3〜5年)腰を据えて働く」スタイルと相性がいい設計になっています。UAEの労働市場が、短期の出稼ぎと長期定住の中間にある駐在型の働き方を想定しているとも読めます。
上限がある
グラチュイティの総額には上限が設けられており、一般に基本給の2年分が天井とされています。どれだけ長く勤めても、無限に積み上がるわけではありません。
これは、高給の長期勤続者に企業が際限なく支払う事態を防ぐための設計です。
帰国の計画に組み込んで考える
グラチュイティは退職時にまとめて受け取れるため、帰国費用や次の生活の準備資金として機能します。受け取り後の海外送金や、日本での課税扱いについては、金額が大きくなるほど専門家に確認しておく価値があります。
公的年金がない国で老後をどう設計するか——グラチュイティはその答えの一部でしかありません。受け取った一時金をどう運用するかまで含めて考えると、UAEで働く意味の捉え方も変わってきます。