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文化・社会構造の分析

ドバイには「古い街」がほとんどない——歴史を持たない都市が抱える奇妙な自由

ドバイの大半は数十年で作られた新しい街。歴史的建造物がほとんどない都市の特殊性と、それがもたらす身軽さと喪失感を読み解く。

2026-08-18
都市歴史社会構造建築

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ヨーロッパの都市を歩くと、数百年前の建物が現役で使われています。京都なら、もっと古い時間が街に積もっています。ドバイにはそれがありません。今あるきらびやかな都市の大半は、ここ数十年で砂漠の上に出現したものです。

歴史がほとんどない都市——これはドバイの弱点のようにも、最大の強みのようにも見えます。過去を持たないことが、この街に独特の身軽さと、同時にある種の空虚さを与えています。

過去がないから、何でも建てられる

歴史のある都市では、新しいものを建てるたびに過去との折り合いが問われます。景観の保護、古い権利、住民の記憶。これらが変化のブレーキになります。

ドバイにはそのブレーキがありません。守るべき古い街並みがないから、世界一高いビルも、人工の島も、ためらいなく建てられます。過去のしがらみがないことが、未来を描く自由になっている。白紙のキャンバスだからこそ、極端な絵が描けるのです。

「古さ」という価値を買えない

一方で、お金で買えないものもあります。それは「時間の蓄積」です。何百年もそこにあったという事実、世代を超えて受け継がれた記憶——これらは、いくら富があっても一夜では作れません。

ドバイは、世界中から最高のものを集められます。しかし「古さ」だけは輸入できない。だからこそ、わずかに残る歴史的な地区や伝統文化を、丁寧に保存し演出しようとします。希少だからこそ、過去の断片が貴重になります。

アイデンティティをどこに置くか

歴史の浅い都市は、自分が何者かを過去に求められません。代わりに、未来のビジョンにアイデンティティを置きます。「私たちはこういう歴史を持つ」ではなく「私たちはこういう未来を作る」と語る。

これは、過去の栄光を語りがちな古い国々とは正反対です。後ろを向いて誇るものがないから、ひたすら前を向く。ドバイの未来志向は、歴史の欠如の裏返しでもあります。

客にとっての心地よさ

外国人在住者にとって、歴史のない街は意外と居心地がいい。深い伝統や地元コミュニティの濃密な関係に、よそ者として入り込む必要がありません。誰もがある意味で新参者で、街そのものが新しい。

過去の重みがないぶん、誰もが平等にこの街の一部になれる。歴史を持たないという欠落が、世界中から人を惹きつける開放性に転じている。ドバイの軽さは、欠点であると同時に、最大の魅力なのだと読めます。

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