UAEの出国禁止(Travel Ban)——借金・訴訟中の外国人が直面するリスク
UAEでは民事訴訟・未払い債務・雇用トラブルが出国禁止(Travel Ban)につながることがある。外国人が知っておくべきリスクと対処法を解説。
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UAEで出国しようとして空港でパスポートを止められる——これはフィクションではなく、実際に起きているケースだ。
「Travel Ban(出国禁止令)」は、UAE当局が裁判所命令または行政命令によって個人の出国を禁止する措置で、外国人にも適用される。UAE全土のすべての出入国ポイント(空港・陸路・海路)でパスポートがチェックされた際に発動する。
どういう場合にTravel Banが発動するか
主な原因として以下が挙げられる:
① 未払い債務・小切手不渡り
UAEでは不渡り小切手(Bounced Cheque)は刑事罰の対象になり得る。家賃・ローン・クレジットカードの未払いが訴訟につながり、その結果としてTravel Banが発令されるケースがある。
② 民事訴訟中
取引先・元雇用主・元配偶者から民事訴訟を起こされている場合、裁判所が審理中に被告のTravel Banを命じることがある。
③ 雇用トラブル・労働訴訟
労働省(MOHRE)への労働紛争申し立てにより、雇用主または従業員にTravel Banがかかるケースがある。
④ 刑事事件・捜査中
刑事捜査の対象になった場合、捜査完了まで出国禁止になる。
外国人駐在員・在住者への影響
日本人でもこのリスクとは無縁ではない。
典型的なケースは、会社を辞めて帰国しようとしたとき。元雇用主がビザのキャンセルや未払いに関する申し立てを行い、出国できなくなるパターンだ。また、連帯保証人になっていた取引が不履行になり、保証人側にも影響が及ぶことがある。
Travel Banがかかっているかどうかは、出国しようとするまで本人が知らないことも多い。事前にUAE移民局(GDRFA)のウェブサイトや各首長国の窓口でステータスを確認できるサービスが利用可能だが、すべてのケースが確実に照会できるわけではない。
Travel Banが発動した場合の対処
Travel Banが発令された後の選択肢は限られる。
- 弁護士を通じて解除申請: 訴訟・債務が解決(和解・全額返済等)すれば、裁判所命令でBanを解除できる
- 保釈金の預託: 金銭的なトラブルの場合、一定額を供託することでBanの一時解除を得るケースもある
- 時間がかかる: UAEの司法手続きは英語・アラビア語で進み、数週間〜数か月を要することがある
弁護士費用はケースによって数千〜数万AED(数十万〜数百万円)に及ぶこともある。
予防として知っておくべきこと
- 帰国前に法的問題がないか確認する: 雇用契約終了時に雇用主から「No Objection Letter」と「Emirates ID返却証明」を取得する
- 小切手・ローン関係は慎重に: 不渡り小切手のリスクを認識する
- 連帯保証は慎重に: 他者の債務保証人になることのリスクを認識する
UAEは多くの面で外国人に暮らしやすい国だが、法的リスクについては日本とは異なる常識が働く。最初から「知っている」状態で生活することが、最大の予防になる。