ドバイのフードトラック文化——200カ国の胃袋が作る路上グルメ
200以上の国籍が暮らすドバイのフードトラック文化。Last Exit、Kite Beachのトラック集積地、価格帯、在住日本人が見つけた穴場を紹介します。
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ドバイには「屋台文化」がない。と言われることが多い。バンコクのカオサン通りやシンガポールのホーカーセンターのような、路上に椅子とテーブルが並ぶ光景はドバイにはない。気温が45℃を超える夏に路上で食事をする人はいないし、衛生規制も厳しい。しかし、ドバイには屋台の代わりにフードトラックがある。しかも、その多様性は東京のフードトラックの比ではない。
Last Exit——高速道路脇のフードトラック集積地
「Last Exit」はドバイ—アブダビ間のE11高速道路沿いに複数箇所ある、フードトラック専用のドライブイン型施設だ。ガソリンスタンドの隣にコンテナやトレーラーを改造したフードトラックが10〜20台並び、駐車場から直接注文できる。
2016年にオープンした最初のLast Exit(Al Khawaneej)は、アメリカンダイナー風のネオンサインとレトロな装飾で話題になった。価格帯は1食25〜50AED(約1,050〜2,100円)程度で、ドバイのレストランと比べると手頃だ。ハンバーガー、シャワルマ、タコス、寿司ブリトー、インドカレー、フィリピン料理——1つの場所で世界中の味が並ぶ。
Kite Beach——ビーチ沿いのフードトラック
ジュメイラにあるKite Beach(カイトビーチ)は、バージュ・アル・アラブが見えるビーチで、海岸沿いにフードトラックが常設されている。サーフィンやカイトボードを楽しんだ後にトラックで食事をするのがドバイのビーチカルチャーの一部になっている。
ここではアサイーボウル(30〜40AED / 約1,260〜1,680円)、フレッシュジュース(15〜25AED / 約630〜1,050円)、ギリシャ風ピタサンド(25〜35AED / 約1,050〜1,470円)など、健康志向のメニューが人気だ。
200国籍の食が混ざる理由
ドバイの人口の約90%が外国人だ。インド、パキスタン、バングラデシュ、フィリピン、エジプト、レバノン、英国、ロシア——200以上の国籍が暮らしている。フードトラックの出店者もこの多様性を反映しており、パキスタン人のビリヤニトラックの隣にレバノン人のマヌーシェ(ピザに似た中東のパン)トラックが並び、さらにその横に韓国人のキンパトラックがある。
この「ごった煮感」は東京の飲食街とは質が違う。東京にも多国籍料理はあるが、作り手がその国の出身者であるケースはドバイほど高くない。ドバイのフードトラックは、移民が自分の国の味をそのまま持ち込んでいる。
フードトラック出店のハードル
ドバイでフードトラックを営業するには、ドバイ市役所(Dubai Municipality)の食品営業許可と、経済開発局(DED)のトレードライセンスが必要だ。初期費用はトラック購入・改装費を含めて200,000〜500,000AED(約840万〜2,100万円)程度とされる。
規制は厳しい。食品衛生検査は抜き打ちで行われ、違反が見つかると即日営業停止になることもある。ドバイの「衛生的な屋台」は、規制の厳しさが品質を担保している面がある。
冬の夜が本番
ドバイのフードトラックが最も賑わうのは10月〜3月の冬季、特に金曜・土曜の夜だ。気温が25℃前後に下がるこの時期、外で食事をする習慣が復活する。Last Exitの駐車場が満車になり、Kite Beachでは夕日を見ながらトラックの列に並ぶ人々が出る。
夏はトラックの前に人がいなくなる。同じ場所が、季節によって全く違う風景を見せる。ドバイの食文化は気温に従属している、と言い換えることもできる。