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ビジネス・会社設立

UAEフリーゾーンとメインランドの会社設立、何が根本的に違うのか

「フリーゾーンなら外資100%」だけで判断する人が見落としている制限——UAEローカル顧客への販売不可・銀行口座開設の難しさ・物理オフィス要件を具体的に整理する。

2026-04-06
UAEフリーゾーンメインランド会社設立ドバイ

この記事の日本円換算は、1AED≒43円で計算しています(2026年4月時点)。為替は変動するので、現地通貨(AED)の金額を基準にしてください。

「UAEで会社を作るならフリーゾーンが正解」という情報が多い。外資100%、法人税優遇、シンプルな手続き。だがフリーゾーンの制限を理解せずに設立すると、事業が動き出した後に詰まる。

フリーゾーンとメインランドの基本構造

フリーゾーン: UAE政府が指定した特別経済区域。DMCC、JAFZA、Dubai Media City、DIFC等、45以上のフリーゾーンがドバイだけでも存在する。各フリーゾーンが独自のルールを持ち、ライセンスを発行する。

メインランド: フリーゾーン以外のUAE全域。DED(Department of Economic Development)がライセンスを発行する。UAE国内市場で自由に営業できる。

項目フリーゾーンメインランド
外資所有比率100%可能100%可能(2020年の法改正以降、多くのセクターで)
UAE国内市場への直接販売制限あり制限なし
法人税条件付きで0%(フリーゾーン優遇、2023年UAE法人税導入後)9%(課税所得AED 375,000超)
銀行口座開設難しいケースがある比較的スムーズ
オフィス要件フリーゾーン内に必要UAE国内に必要
ビザ発行フリーゾーンが発行DEDの管轄

見落とされている制限①: UAE国内顧客への販売

フリーゾーン法人は、UAE国内のメインランド企業や個人に直接サービスを提供することに制限がある。

2025年の規制緩和により、フリーゾーン法人がメインランドで営業するための「デュアルライセンス」や「ブランチライセンス」の取得が容易になった。だがこれは追加の手続きとコストが発生する。

具体例: ドバイのDMCCフリーゾーンでコンサルティング会社を設立した場合、DMCCのライセンスだけではドバイ市内の企業に直接請求書を発行できない。メインランドのブランチを設立するか、現地のディストリビューターを通す必要がある。

「海外クライアントにリモートでサービスを提供する」だけなら問題ない。だがUAE現地の企業を顧客にしたい場合、フリーゾーンだけでは不十分だ。

見落とされている制限②: 銀行口座開設

フリーゾーン法人の銀行口座開設は、メインランド法人より難しいケースが多い。

UAE国内の大手銀行(Emirates NBD、ADCB、Mashreq等)は、フリーゾーン法人に対してより厳格なKYC(本人確認)を行う傾向がある。理由はシンプルで、フリーゾーン法人はUAE国内での実体(取引先・従業員・物理的な営業実績)が薄いケースが多く、マネーロンダリング対策の観点からリスクが高いと見なされるからだ。

実態として、2025年時点で法人口座の開設に1〜3ヶ月かかるケースが報告されている。個人口座はEmiratesIDがあれば比較的スムーズに開ける。

見落とされている制限③: 物理オフィス

フリーゾーン法人はフリーゾーン内に物理的なオフィス(またはフレキシデスク)を持つ必要がある。

フリーゾーンの中には「バーチャルオフィス」で登記できるところもあるが、ビザの発行にはフレキシデスク以上のオフィスが必要なケースが多い。

コスト例(2025年時点、ドバイ主要フリーゾーン):

フリーゾーンフレキシデスク(年額)小規模オフィス(年額)
DMCCAED 15,000〜(約65万円〜)AED 35,000〜(約150万円〜)
IFZAAED 6,000〜(約26万円〜)AED 15,000〜(約65万円〜)
Dubai Media CityAED 20,000〜(約86万円〜)AED 50,000〜(約215万円〜)

メインランド法人も物理オフィスが必要だが、シェアオフィスやビジネスセンターを利用できるエリアが広く、選択肢は多い。

法人税: 「フリーゾーンは無税」は条件付き

2023年6月にUAEは連邦法人税(Corporate Tax)を導入した。税率は課税所得AED 375,000(約1,610万円)超で9%。

フリーゾーン法人には「Qualifying Free Zone Person(QFZP)」として0%税率が適用される可能性があるが、以下の条件を満たす必要がある。

  • フリーゾーン内に実質的な経済活動がある(Substance要件)
  • 適切な従業員・設備・支出がある
  • メインランドとの取引が一定比率以下

つまり、「ペーパーカンパニーをフリーゾーンに置いて無税」という使い方は通用しなくなった。フリーゾーン法人でも実態のある事業運営が求められる。

フリーゾーンが「正解」ではないケース

以下のケースでは、メインランド法人の方が合理的だ。

  1. UAE国内の企業・個人が主要顧客: メインランドなら追加ライセンスなしで直接営業できる
  2. 物理的な店舗・倉庫が必要: フリーゾーン外に店舗を構えるにはメインランドライセンスが必要
  3. UAE国内でEコマースを展開: 消費者への直接販売はメインランドが有利
  4. 政府案件への入札: メインランド法人でないと参加できない入札がある

フリーゾーンが合うケース

逆に、以下のケースではフリーゾーンが合う。

  1. 海外クライアント中心のサービス業: コンサル・IT・デザイン等でUAE国内顧客が不要
  2. 輸出入ビジネス: JAFZA等の港湾フリーゾーンは関税免除のメリットが大きい
  3. 法人税0%の維持が重要: QFZP要件を満たせる実態のある事業
  4. 少人数でスタートしたい: フレキシデスクから始められるフリーゾーンもある

「フリーゾーンかメインランドか」は、事業モデルによって答えが変わる。「外資100%・税金ゼロ」の見出しだけで判断せず、自分の顧客がどこにいるかを先に考えた方がいい。

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