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ドバイでゴールドを買うのは投資ではなく「貯金」だった

UAEの金消費量は世界トップクラス。インド・パキスタン系コミュニティの「金=貯金」の文化、ドバイのゴールド・スーク、在住日本人が金を買う場合の注意点を解説する。

2026-05-17
UAEドバイゴールド投資

この記事の日本円換算は、1AED≒42円で計算しています(2026年4月時点)。為替は変動するので、現地通貨(AED)の金額を基準にしてください。

インド人の同僚の結婚式に招待された。花嫁は全身を金で覆っていた。ネックレスが3連。腕輪が両腕に20個以上。頭飾りも金。総重量は推定500g以上。2025年の金相場で換算すると、身体の上に2,000万円以上が載っている計算だ。

ドバイに住むと、「金」に対する価値観が日本とは全く違うことに気づく。

金は「貯金箱」

南アジア系のコミュニティ(インド、パキスタン、バングラデシュ)にとって、金は投資対象ではなく「貯金」だ。銀行に預ける代わりに、金のジュエリーを買う。

なぜか。銀行口座が凍結されることがある不安定な政治環境を経験してきた歴史がある。通貨が急落しても金は価値を保つ。持ち運べる。国境を越えても価値が変わらない。金は「最も信頼できる通貨」であり、身に着けられる普通預金口座だ。

ドバイは南アジアからの出稼ぎ労働者が多い。彼らの多くは毎月の給料の一部で金を買い、帰国時に持ち帰る。ゴールド・スークが観光客だけでなく、労働者にとっても日常の「銀行」として機能している。

ドバイが「金の街」である理由

UAEは世界の金取引のハブだ。Dubai Multi Commodities Centre(DMCC)はドバイの金取引の中心であり、世界の金貿易の約20〜25%がドバイを経由するとされる。

なぜドバイに金が集まるのか。

関税がほぼゼロ。 UAEの金の輸入関税は5%だが、フリーゾーン経由であれば実質的に免税で取引できる。

VAT(付加価値税)が低い。 UAEのVATは5%。金地金(投資用の金塊)は0%。ジュエリーには5%のVATがかかるが、ヨーロッパの20%前後と比べれば大幅に安い。

地理的位置。 アフリカ、南アジア、中東の結節点に位置するドバイは、金の物流ハブとして最適だ。

規制の柔軟性。 DMCCは世界最大のフリーゾーンの一つであり、金取引に関する規制が比較的柔軟。ただし近年はマネーロンダリング対策の強化が進んでいる。

ゴールド・スークの歩き方

デイラのゴールド・スーク(Gold Souk)に行くと、300軒以上の宝飾店のショーウインドウが金色に輝いている。

覚えておくべき知識。 金の純度はカラット(K)で表される。24K(純金、99.9%以上)、22K(91.7%)、21K(87.5%)、18K(75%)。中東では22Kが主流。日本では18Kが一般的だ。

価格の仕組み。 金の価格は「金の重量 × 国際相場」+「工賃(making charge)」で決まる。金の重量部分はどの店でもほぼ同じ。交渉の余地があるのは工賃のみ。工賃は金額の5〜15%が相場だが、複雑なデザインほど高くなる。

交渉のコツ。 3〜4店を回って工賃を比較する。「隣の店ではこの工賃だった」と言えば下がることが多い。ただし品質(仕上げの精度)で差が出るので、最安値だけを追わない方がいい。

在住日本人と金

ドバイ在住の日本人が金を買うケースはいくつかある。

お土産。 一時帰国時のお土産として金のジュエリーを買う。日本で同等品を買うより工賃分が安い。

資産分散。 円安を背景に、給料の一部を金に変える在住者もいる。金地金(1oz = 約31.1g)のコインやバーはDMCCやゴールド・スークの一部の店で購入できる。

注意点。 日本に持ち帰る場合、金地金は1kgを超えると日本の税関で申告が必要。申告しないと没収+罰金の対象になる。ジュエリーとして身に着けている分は「個人的使用品」として一定額まで免税だが、明らかに大量の金ジュエリーを持ち帰ると税関で質問される可能性がある。

金が教えるもの

日本人にとって「貯金」は銀行口座の数字だ。ドバイのインド人コミュニティにとって「貯金」は首にかけるネックレスの重量だ。

どちらが正しいということではない。しかし、通貨の信頼性、政治の安定性、国家と個人の関係——これらの前提が違えば、「お金の保存方法」も変わる。

金のジュエリーを身に着けた花嫁は、結婚の祝福を受けているだけではない。両家の経済力の証明であり、万が一の保険であり、世代を超えて受け継がれる資産だ。42円のアブラに乗ってデイラに行き、ゴールド・スークを歩くと、「お金とは何か」という問いが少しだけ揺らぐ。


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