金(ゴールド)は保険だ——UAEの金市場と中東・南アジア人の資産観
ドバイのゴールドスークには世界中から金目当ての買い物客が来る。南アジア系コミュニティにとって金は「貯金の形」だ。なぜ金が資産として機能するのか、この文化的な理由を読む。
この記事の日本円換算は、1AED≒41円で計算しています(2026年5月時点)。為替は変動するので、現地通貨の金額を基準にしてください。
「結婚式の花嫁が金のネックレスを重ねて付けている」——インド系・パキスタン系・アラブ系の結婚式で見られるこの光景は、単なる装飾ではない。
金は資産だ。
なぜ金が「貯金」として機能するか
インド・パキスタン・中東の一部では、金のジュエリーは「身につける資産」として文化的に位置付けられている。
歴史的な背景として、銀行制度が整っていなかった時代・インフレが激しかった時代には、現金を持つより金を持つ方が価値が安定しやすかった。「いざというときに売れる」形の貯蓄として、世代を超えて伝わってきた。
ドバイのゴールドスーク
デイラにあるゴールドスーク(Gold Souk)は、世界有数の金市場のひとつとされる。400店舗以上(推定)の金細工店が軒を連ね、ショーウィンドウに金のネックレス・バングル・イヤリングが積み重なっている。
「世界で最も金が集まる市場のひとつ」と言われ、観光スポットとしても有名だが、実際に買い物している人の多くは在住者・旅行者を問わず本気の買い手だ。
価格の仕組み
金の価格は世界市場(London Bullion Market等)の金スポット価格に連動する。店頭の価格は「グラムあたりのゴールド代金」+「職人賃(Making Charge)」の構成だ。
職人賃は品物の複雑さ・デザインによって異なり、この部分が交渉の余地がある。「価格の交渉はするもの」というスークの文化が、ゴールドスークでも生きている。
日本人と金の関係
日本でも金地金への投資は伝統的にあるが、「ジュエリーとして身につけながら資産を持つ」という発想は一般的でない。
ドバイに住んでいると、「金のジュエリーを買う=資産購入」という考え方に触れる機会が増える。投資として合理的かどうかは市場状況・購入時の価格による部分が大きいが、「金を持つ文化」を身近に感じる経験は、資産観の多様性を広げる。
ゴールドスークを歩く
観光としてゴールドスークを歩くだけでも、その密度・熱量は体験する価値がある。買うかどうかに関わらず、価格を聞いてみる・職人賃について話を聞く——交渉という行為自体が、ひとつの文化体験だ。