カファラ制度とは何か——ドバイで働く外国人労働者を縛る仕組みの現実
UAE・ドバイのスポンサーシップ制度(カファラ)の仕組みと、2021年以降の改革の実態。日本人駐在員・現地採用が知るべき就労ビザと雇用主の関係。
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ドバイで働く外国人は、全人口の約90%を占める。その全員が「スポンサー」に紐づいた在留資格を持っている。
このシステムが「カファラ(Kafala)」制度——湾岸諸国に広く存在する、外国人労働者のスポンサーシップ制度だ。
カファラ制度の基本
カファラはアラビア語で「保証・担保」を意味する。制度の骨格:
- 外国人がUAEで就労・在留するには、**スポンサー(Kafeel)**が必要
- スポンサーは企業(就労ビザ)または個人(家庭雇用・投資家ビザ等)
- スポンサーが在留ビザを発行・管理し、労働者の入出国を実質的にコントロールする
問題点として国際社会から批判されてきたのは:
- 労働者がスポンサーなしに転職・帰国できないケースがあった
- スポンサーがパスポートを預かる(不法行為だが慣行として存在した)
- スポンサーへの依存度が高く、ハラスメント・賃金未払いへの対応が難しかった
2021年の改革
UAE政府は2021年に労働法の大幅改正を行い、いくつかの改善を実施した:
- NOC(No Objection Certificate)の廃止:以前は転職時にスポンサーの許可(NOC)が必要だったが、廃止された。転職の自由が拡大した。
- 雇用契約の規制強化:雇用契約の標準化・賃金保護システム(WPS)の義務化・争議申立て窓口の整備
- パスポート預かりの禁止の明確化:雇用主によるパスポート保管は違法と明文化
ただし「改革が全労働者に届いているか」は別問題だ。低賃金の建設労働者・家事労働者への適用は課題が残ると指摘する国際NGOは多い。
日本人在住者への実際の影響
日本人のドバイ在住者(駐在員・現地採用)が直接カファラの問題に直面するケースは少ない。
実務的に知っておくべきこと:
会社を辞めるとき:就労ビザは雇用主(スポンサー)にひも付いているため、退職と同時にビザの有効期間が変わる。次の就職先が決まる前に「ビザなし期間」が生じる可能性がある。改革後は転職猶予期間が設けられているが、手続きは早めに動く必要がある。
起業・フリーランス:フリーゾーン設立やフリーランスビザがあり、会社のスポンサーなしで在留できる仕組みはある。ただしフリーゾーンごとに条件が異なり、コストもかかる。
家族帯同:配偶者・子どもを呼ぶためには、本人のビザのスポンサーである雇用主の許可が必要な場合がある(正確には雇用主が家族ビザのスポンサーになる)。
カファラ制度はUAEの労働市場の根幹を形成する仕組みだ。改革は進んでいるが、「完全な自由な転職市場」にはまだ距離がある。就労条件を確認する際、「ビザの扱い」を雇用契約の最重要確認項目の一つとして扱う必要がある。