ドバイを支える200万人——建設労働者の経済圏と在住日本人が知っておくべきこと
UAEの人口の85〜90%は外国人。その大半を占める低賃金労働者の存在なしにドバイの街は成立しない。カファラ制度と労働移民の実態を、在住者として知っておくべき文脈で整理する。
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ドバイの道路は美しく舗装されている。高層ビルが次々と完成する。モールの清掃は行き届いている。この街が機能しているのは、日々それを維持する大勢の人々がいるからだ。
彼らのほとんどは南アジア(インド・パキスタン・バングラデシュ)から来た出稼ぎ労働者で、建設・清掃・警備・家事・飲食サービスを担っている。在住日本人はほぼ毎日この人々と接しているが、その背景を意識する機会は少ない。
UAEの人口構造
UAE国勢調査および各種推計によると、UAE在住者の約85〜90%が外国人(expatriateおよび外国人労働者)だ。国籍を持つエミラティは人口全体の10〜15%程度にとどまる。
外国人の内訳は大まかに:
- 南アジア系(インド・パキスタン・バングラデシュ等): 最多、全体の約60%以上
- アラブ系(エジプト・ヨルダン・シリア等): 次いで多い
- 欧米・東アジア系(日本人含む): 高スキル・管理職層が中心
在住日本人は「外国人在住者」の中でも経済的・社会的に上位に位置することが多い。同じ「外国人」でも、その経験・権利・生活の現実は大きく異なる。
カファラ制度とは何か
カファラ(Kafala)制度は、中東諸国(UAEを含む)で使われてきた外国人労働者管理制度だ。
基本的な仕組みは、労働者がUAEに入国・滞在するために「スポンサー(雇用主)」への依存が法的に構造化されていること。就労ビザはスポンサーとひも付いており、転職・離職・出国がスポンサーの許可なしには難しい状況が長く続いた。
この制度は人権団体から強く批判されてきた。労働者がパスポートを取り上げられた(これは違法だが実態として起きていた)、賃金未払いでも離職できない、劣悪な宿舎に住まわされるなどの問題が報告されている。
UAEは2021年以降、制度改革を進めた。労働者が一定の条件下でスポンサーの許可なしに転職できるルール改正が行われ、「新労働法」として施行された。改善は進んでいるが、現場での実態との乖離は指摘され続けている。
建設現場という環境
ドバイの夏(6〜9月)、屋外気温45度超えの状況でも建設現場は稼働する。UAEは2020年代以降、夏期の昼間時間帯(通常12:30〜15:00)の屋外労働を禁止する制度を持っている。規制自体は存在するが、施行の徹底度は議論が続いている。
居住環境については、企業が用意する「労働者キャンプ(Worker Camp)」に集団で住むパターンが一般的だ。KL郊外に似た場所がドバイ郊外にも存在し、1部屋に複数人が生活する。
在住日本人として持てる視点
ドバイに住む日本人は、この社会構造の外部にいるわけではない。コンドミニアムの清掃員、カフェのウェイター、Uber運転手、スーパーのレジ担当——日常的に接する人々の多くが、この労働移民の経済圏の中にいる。
「知っているかどうか」は、接し方に影響する可能性がある。チップの文化(ドバイではサービスに対して5〜10AED程度を渡す習慣がある)も、こういった文脈で理解すると意味が変わる。
ドバイが輝かしく見える一方で、その光が何によって支えられているかを認識しておくことは、3年・5年と過ごす在住者として意味があると考える。