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文化・社会構造の分析

公用語はアラビア語、でも街は英語で回る——UAEの「共通語なき共生」の不思議

UAEは公用語がアラビア語だが、日常は英語や各国語が飛び交う。誰もが第二言語で会話する社会の独特な言語生態系を読み解く。

2026-08-21
言語社会構造多文化生活

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UAEの公用語はアラビア語です。ところが、実際に街を歩いて耳にする言葉は、英語、ヒンディー語、タガログ語、ウルドゥー語など多岐にわたります。役所の書類はアラビア語と英語が併記され、店員と客が互いの母語ではない言葉で会話する光景が日常です。

公用語があるのに、それが共通語として機能しきっていない。誰もが第二言語で意思疎通する社会。この独特な言語生態系は、UAEという国の成り立ちをそのまま映しています。

「みんなが少しずつ不自由」な平等

UAEの言語状況の面白さは、ほとんどの人が母語以外で生活している点です。英語を話すといっても、ネイティブは多くありません。インド系、フィリピン系、アラブ系、それぞれが訛りのある英語で意思疎通します。

この「全員が少しずつ不自由」な状態が、かえって平等を生みます。誰の母語も基準にならないから、完璧さは求められない。通じればいい、という割り切りが、多国籍社会の潤滑油になっています。

英語が「中立の道具」になる

ここで英語が果たす役割は、文化的な支配の言語ではなく、中立的な道具です。どの民族のものでもない共通の媒介として機能します。

もしUAEで生活言語がアラビア語一色だったら、アラビア語圏出身者が有利になり、それ以外の外国人は不利になります。英語という「誰のものでもない言葉」を実用の共通語にすることで、特定の集団に偏らない社会が保てる。言語の中立性が、共生の条件になっています。

アラビア語の「象徴」としての地位

では、なぜアラビア語を公用語として掲げ続けるのか。それは、実用とは別に、国家のアイデンティティを支える象徴だからです。

実務は英語で回しても、国の根っこにアラビア語とイスラムの文化を据えておく。実用言語と象徴言語を分けることで、グローバルな機能性と民族的な誇りの両方を保っています。これは、週末や寛容の運営に見られたのと同じ、二面性を両立させる発想です。

言語から見える社会の設計

外国人在住者にとって、英語さえできれば生活が成り立つのはありがたい話です。同時に、アラビア語ができなくても深く溶け込めないという、見えない壁も感じます。

実用は開かれ、核は閉じている。誰でも参加できるが、中心には入れない。UAEの言語生態系は、この国が外国人をどう受け入れているかを、最も日常的なレベルで教えてくれます。共通語がないのに回る社会——それ自体が、UAEの共生モデルの証明なのです。

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