何国人の家族なのか——ドバイで育つ多国籍家族と国籍の複雑さ
ドバイには、父がインド人・母がフィリピン人・子どもはUAE生まれという家族が普通に存在する。この「どこの国にも完全には属さない家族」が直面する国籍・パスポート・帰属意識の問題を考える。
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「あなたは何人ですか?」——この質問が最も答えにくい人が多く住む都市がドバイかもしれない。
UAEは永住権を基本的に与えない
多くの国は長期居住者に「永住権(Permanent Residence)」を認める仕組みを持つ。オーストラリア・カナダ・ドイツ——一定年数の滞在と条件を満たせば、「その国に住み続ける権利」が得られる。
UAEはこの仕組みが限定的だ。ゴールデンビザ(10年更新のロングタームビザ)は2019年頃から導入されたが、永住権・市民権とは異なる。在住し続けるには雇用・投資・資産のいずれかに基づくビザの更新が必要で、仕事を失えば出国せざるを得ない。
子どもの国籍はどうなるか
UAEは血統主義を採用しており、UAEで生まれた子どもの国籍は親の国籍に従う。インド人の父を持つ子どもはインド国籍、日本人の母を持つ子どもは場合によっては日本国籍を取得できる(日本の国籍法による)。
つまりドバイで生まれ育っても、その子どもはUAE国籍を得られず、自分の「母国」と感じる場所の国籍で生きていく。
実際の多国籍家族の体験
「私はドバイで生まれて、日本のパスポートを持っているが、日本語はほとんど話せない。日本に行ったことも数回しかない。でも書類上は日本人だ」——ドバイ育ちの日本人家庭の子どもがそう話す場面は珍しくない。
逆に「インドのパスポートを持っているがインドに住んだことはなく、インドの文化も実感が薄い」というインド系2世もいる。
「書類上の国籍」と「心理的な帰属」の乖離は、多国籍家族において特に鮮明になる。
ゴールデンビザの活用
長期滞在の安定を求める外国人が利用するのがゴールデンビザだ。医師・研究者・芸術家・起業家・不動産投資家などが対象で、雇用主に依存しない滞在権が得られる。
日本人でもゴールデンビザを取得しているケースはある。ただし資産・実績の条件があり、全員が取得できるわけではない。
「ホーム」の定義を問い直す
多国籍家族がドバイで暮らすことは、「ホームとはどこか」という問いを日常的に抱えることだ。
「生まれた場所」「育った場所」「パスポートの国」「言語の場所」——どれを「ホーム」と呼ぶかは、誰も答えを持っていない。それがドバイという都市の特殊な文化的磁場だ。