食料の9割を輸入する国が「食料安全保障」に巨費を投じる理由——砂漠の国の不安
UAEは食料の大半を輸入に頼る。それでも垂直農業や海外農地確保に投資する。砂漠の国が抱える食の脆弱性と、その克服戦略を読み解く。
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UAEのスーパーに並ぶ野菜や果物の産地表示を見ると、世界地図のようです。インド産、オランダ産、ケニア産、オーストラリア産。砂漠の国は、ほとんどの食料を輸入に頼っています。
それなのにUAEは、垂直農業の施設や海外の農地確保、食料備蓄に多額の投資をしています。輸入で困っていないなら、なぜわざわざ自前の食料供給にこだわるのか。ここに、豊かに見える国が抱える根深い不安が表れています。
「お金があれば買える」が崩れた瞬間
平時には、食料は輸入すれば済みます。お金のあるUAEにとって、買えないものはほぼありません。問題は、平時が永遠に続くとは限らないことです。
世界的な供給網の混乱や、輸出国の事情で輸出が止まる事態が起きると、「お金があっても買えない」状況が生まれます。食料を他国に全面依存することは、自国の食卓の主導権を他国に握られることと同じです。豊かさは、危機の前では意外ともろい。
砂漠で農業をするという挑戦
UAEは、室内で人工光と循環水を使う垂直農業に投資してきました。水も土も乏しい砂漠で、効率的に作物を育てる技術です。これは「自然条件を技術で上書きする」というUAEらしい発想の延長線上にあります。
ただし、これで食料自給ができるわけではありません。あくまで、危機のときに最低限を確保するための保険です。完全な自給を目指すのではなく、依存度を下げて選択肢を持つことが目的です。
海外の農地を押さえる戦略
もう一つの手段が、海外の農地への投資です。他国に農地を確保し、そこで生産した食料を優先的に確保する。自国の砂漠で育てられないなら、育てられる土地そのものに関与する発想です。
これは、石油を輸出して得た富を、未来の食料という別の安全網に変換する動きとも読めます。地下から掘り出した資源を、地上の食料安全保障に積み替えているのです。
豊かさの裏にある脆さ
UAEの食料戦略は、この国の本質をよく映しています。豊かで、何でも手に入るように見えて、その足元は他国への依存で支えられている。だからこそ、富を使って脆さを補おうとする。
何不自由なく見える国が、最も基本的な「食べること」に不安を抱えている。この緊張感こそが、UAEが立ち止まらずに次々と投資を続ける原動力の一つになっています。