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自然・気候

UAEに住むと「四季を失う」——気候が一定の国で起きる感覚の変化

UAEはほぼ夏と短い穏やかな季節だけ。四季のない国で暮らすと時間感覚や記憶のあり方が変わる。その変化を在住者の体感から読み解く。

2026-08-26
気候季節生活文化

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UAEに住んで気づくことの一つは、クローゼットの中身が変わらないことです。厚手のコートも、冬物のセーターも、ほとんど出番がありません。一年の大半が暑く、穏やかな季節も日本の冬ほど寒くはならない。

四季がない、というより「夏と、少し過ごしやすい時期」しかない国。これは便利なようでいて、実は人間の時間感覚に静かな影響を与えます。日本人が無意識に持っていた「季節で時を刻む」感覚が、ここでは通用しなくなります。

季節は「時の目盛り」だった

日本では、季節が時間の経過を教えてくれます。桜が咲けば春、蝉が鳴けば夏、紅葉が散れば秋。これらは、暮らしの中に埋め込まれた天然のカレンダーです。

UAEには、その目盛りがほとんどありません。景色が大きく変わらないまま、月日が過ぎていきます。すると、時間の流れが妙に均一になり、「いつのことだったか」が曖昧になりがちです。季節という記憶の手がかりを失うと、時間がのっぺりと感じられるのです。

記憶は季節に紐づいている

人の記憶は、しばしば季節と結びついています。あの夏の出来事、あの冬の思い出。季節の感触が、記憶を引き出す鍵になっています。

四季のない場所で暮らすと、この鍵が効きにくくなります。出来事と季節が紐づかないので、過去がのっぺりと並ぶ。日本に一時帰国して季節を感じたとき、ふいに記憶が鮮やかによみがえるのは、失っていた鍵を取り戻すからかもしれません。

「変わらないこと」の快適さと退屈

気候が一定であることには、もちろん利点があります。服を季節ごとに入れ替える手間がなく、予定が天候に左右されにくい。安定は、生活を計画しやすくします。

だが、変化のなさは退屈にもつながります。季節の移ろいがもたらす、期待や名残惜しさといった感情の起伏が乏しくなる。便利さと引き換えに、時間に表情がなくなる。これは、住んでみないと分からない感覚です。

自分で季節を作るという工夫

四季のないUAEで時間に表情を取り戻すには、自分で区切りを作る工夫が要ります。一時帰国で日本の季節を浴びる、現地の宗教の暦やイベントを生活に取り入れる、月ごとに小さな目標を置く。

人工的にでも、時間に目盛りを刻む。気候が季節をくれないなら、自分で季節を作る。四季を失う経験は、私たちが季節というものにどれだけ頼って生きてきたかを、逆説的に教えてくれます。

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