石油が出るうちに石油を捨てる国——UAEの「資源の呪い」回避戦略を読む
UAEは石油収入があるうちに脱石油の経済へ舵を切ってきた。資源国が陥りがちな罠を、なぜ早期に避けようとするのか。その論理を読み解く。
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UAEは石油で豊かになった国です。それなのに、観光・金融・物流・テクノロジーといった、石油以外の産業へ猛烈な勢いで投資を続けています。石油がまだ出るうちから、石油に頼らない国を作ろうとしている。
普通なら、儲かる資源があれば、それに乗り続けたくなります。なぜUAEは、稼ぎ頭が健在なうちに、わざわざ別の柱を立てようと急ぐのか。ここには「資源の呪い」と呼ばれる、資源国特有の罠への強い警戒があります。
資源は「楽だが危うい」収入
地下から資源を掘り出して売る経済は、楽です。労せず大金が入ってきます。だが、この楽さには罠があります。
資源収入に依存すると、他の産業を育てる必要がなくなり、国全体が一つの資源の価格に運命を握られます。価格が暴落すれば、国の財政も雇用も一気に揺らぐ。さらに、資源があるうちは人々が働く動機を失いやすい。豊かさが、かえって国の体力を奪うのです。これが「資源の呪い」です。
「いつか枯れる」を前提に動く
UAEの指導者たちは、石油がいつか枯れる、あるいは価値を失う未来を早くから見据えてきました。「最後の一滴を売る日」より前に、石油なしで成り立つ国を完成させる——それが目標です。
石油という時限装置の上に座っている自覚があるからこそ、まだ余裕のあるうちに次の経済を作ろうと焦る。富があるうちに富の源泉を移し替える。これは、資源が枯れてから慌てる国々とは正反対の発想です。
富を「別の資産」に変換する
UAEがやっているのは、地下資源という有限の富を、別の形の資産に変える作業です。石油収入を、観光インフラ、金融センター、海外への投資、人材を呼び込む環境に変換していく。
掘れば減る資源を、減らずに価値を生み続ける仕組みへと積み替える。世界一の建築も、フリーゾーンも、巨大ファンドも、すべてはこの変換作業の一部です。石油の富を、石油の後も残るものに作り替えているのです。
危機感が原動力
外から見ると、UAEの繁栄は余裕の産物に見えます。だが、その根底にあるのは余裕ではなく危機感です。今の豊かさは永遠ではない、という冷めた認識が、立ち止まらない投資の原動力になっています。
豊かなうちに次を作る。稼げるうちに稼ぎ方を変える。資源国の多くが避けられなかった罠を、UAEは恐れるからこそ早く動く。石油が出るうちに石油を捨てる戦略は、繁栄の慢心ではなく、滅びへの警戒から生まれていると読めます。