UAEに公的年金はない——外国人が老後資金を自分で設計する必要がある理由
UAEの年金制度は基本的に自国民向け。外国人労働者には公的年金がなく、退職金と自助努力で老後を組み立てる必要がある。その構造と備え方を整理する。
この記事の日本円換算は、1AED≒44円で計算しています(2026年6月時点)。為替は変動するので、現地通貨(AED)の金額を基準にしてください。
日本で働いていると、給与から厚生年金が天引きされ、老後の最低限はなんとなく国が面倒を見てくれる感覚があります。UAEには、その感覚に対応するものがほぼありません。
UAEの公的な年金・社会保険制度は、原則として自国民を対象に設計されています。外国人労働者は、これとは別の論理で老後を考える必要があります。
公的年金は基本的に自国民向け
UAEには社会保障の枠組みがありますが、その中心はUAE国民(および一部の湾岸諸国国民)です。外国人労働者は、給与天引きの公的年金に加入する形にはなっていません(2026年時点。制度は変更され得ます)。
外国人にとっての退職時の主な受け取りは、前述したグラチュイティ(退職一時金)です。これは老後の生活費を継続的に保証するものではなく、あくまで勤続に対する一時金です。
「年金がない」ことの設計思想
これは制度の欠陥というより、UAEという国の前提そのものです。外国人労働者は基本的に「働く期間だけ滞在し、引退すれば自国へ戻る」前提で受け入れられてきました。
老後の面倒まで国が見る必要はない——その代わり所得税を取らない。働く現役世代から税を取らず、その後の生活も保証しない。日本の「現役世代が高齢世代を支える」賦課方式とは正反対の発想です。
UAEで多く稼げる背景には、この「老後は自己責任」という前提が組み込まれています。手取りが多いのは、将来への天引きがないからでもあります。
自分で積み上げるしかない
年金がない以上、現役時代の高い手取りをそのまま使い切ると、引退後に何も残りません。UAEで長く働く人ほど、給与の一部を計画的に運用や貯蓄に回す習慣が欠かせません。
日本の年金制度を維持するため、海外在住でも国民年金に任意で加入し続けるという選択肢もあります。将来日本に戻る可能性があるなら、日本側の制度との二重の設計を考える価値があります。
高い手取りは「前借り」かもしれない
UAEの所得税ゼロは魅力ですが、その分だけ将来の安全網を自分で買う必要があります。手取りの多さに慣れて生活水準を上げきってしまうと、年金のない国の現実が引退時に重くのしかかります。
無税で稼げる国というのは、裏返せば「老後を全部自分で背負う国」でもある。この二面性を最初から織り込んでおくと、UAEでの稼ぎの使い方が変わってきます。