UAEスタートアップエコシステム:Vision 2031が描く脱石油経済
石油後の経済を目指すUAEのスタートアップ・イノベーション政策。Hub71・フリーゾーン活用・外国人起業の実態と可能性を解説。
この記事の日本円換算は、1AED≒41円で計算しています(2026年4月時点)。
「石油が尽きた後のUAEをどうするか」——この問いへの答えとして、UAE政府は技術・イノベーション・起業家エコシステムへの投資を続けている。Vision 2021(2021年達成)の後継として掲げるのが「We the UAE 2031」で、GDP多様化・デジタル経済拡大が柱だ。
Hub71:アブダビのスタートアップ拠点
Hub71はADGM(アブダビ・グローバル・マーケット)内に設立されたスタートアップ支援施設だ。入居スタートアップにはオフィスや補助金の提供・投資家ネットワークへのアクセスが用意されている。
早期段階のスタートアップがUAEを「アジア〜欧州・アフリカの中継点」として活用するケースが増えており、インドのスタートアップがアジア以外に最初に進出する先としてUAEを選ぶ傾向がある。
フリーゾーンと外国人起業
UAEには50以上のフリーゾーンがある。フリーゾーン内に設立した会社は、外国人が100%オーナーになれる(従来、本土(メインランド)では外国人の持分上限が49%だったが、2021年に改正がありメインランドでも100%外資が可能な業種が拡大した)。
フリーゾーン設立費用はゾーンや業種によって異なるが、最安値ではDiFC(ドバイ国際金融センター)系のスモールビジネスパッケージで年間5,000〜8,000USD程度から始まる選択肢もある(提供ゾーンによって変動)。
日本人起業家の実態
ドバイで起業する日本人は増えている。ビジネスコンサルタント・EC事業・マーケティング代理店・IT受託開発——日本市場向けを日本語でやりながらUAEに法人を置く「バーチャル起業家」的なスタイルも多い。
税制面の優位(個人所得税なし・法人税9%で年間37.5万AEDの免除枠あり)と、ゴールデンビザで長期滞在できる環境が組み合わさっている。
課題
スタートアップエコシステムとしての深さはシリコンバレーや東アジアのハブ(シンガポール等)にはまだ及ばない。VCの数・エンジェル投資家の密度・技術人材の厚みという面で差がある。
また「テック系の人材(エンジニア)は採用が難しい」という声は多く、優秀なエンジニアはシンガポール・ロンドン・ニューヨークを選ぶ傾向がある。「税金がない」だけでは採用競争に勝てない現実がある。それでも「ポテンシャルがあるマーケット」として見る視点は残っており、成長余地を信じて動く人たちがいる。