オーストラリアで親の介護——高齢者ケアシステムと在住日本人家族の選択
オーストラリアには政府補助の高齢者ケアシステムがあります。日本人在住者が親をオーストラリアに呼び寄せる際の現実的な選択肢と、コスト・ビザの壁を解説します。
この記事の日本円換算は、1AUD≒100円で計算しています(2026年4月時点)。
オーストラリアに長く住んでいると、日本にいる親の老いという問題が現実になってくる。「親をこちらに呼べないか」という相談は在住日本人コミュニティでも珍しくないが、実際にはかなりの壁がある。
オーストラリアの高齢者ケア制度
オーストラリアの高齢者ケア(Aged Care)は、連邦政府が大きく補助する仕組みになっている。主に以下の2種類がある。
Home Care Package(在宅ケア)
- 政府補助で在宅介護サービス(訪問介護・食事配達・交通支援等)を受けられる
- 4段階のレベルがあり、補助額はLevel 1で年約9,000AUD〜Level 4で約55,000AUD(約550万円)程度(2024年度概算)
- 永住権または市民権が必要。ただし申請から実際のサービス開始まで数ヶ月〜数年待機することも多い
Residential Aged Care(入居型介護施設)
- 政府補助のナーシングホーム。費用は収入・資産に応じた自己負担額
- 基本的なデイリーフィーは約60〜100AUD/日(約6,000〜10,000円/日)
- こちらも入居待機が長い施設が多い
親をオーストラリアに呼ぶビザの現実
問題は、日本にいる親が高齢者ケアを受けられる状況でオーストラリアに入れるかどうかだ。
親ビザ(Parent Visa)
- Subclass 103(親ビザ):恒久的な居住権取得まで数十年待機という現実がある
- Subclass 143(Contributory Parent Visa):費用が1人あたり約43,600AUD(約436万円)以上かかる上に、数年の待機がある
- 短期滞在ビザ(3ヶ月〜1年)での繰り返し滞在は制度上想定されていない
実態として、親ビザは費用・時間の両面でハードルが非常に高い。
在住日本人の実際の対応
多くの在住日本人が取る選択肢はいくつかある。
- 日本の介護施設に任せる:介護保険制度が整っている日本の施設を利用し、自分は年に1〜2回帰国して様子を見る
- 里帰り(自分が日本に戻る):状況が悪化した時点でオーストラリアを離れて帰国する選択
- 兄弟・日本の親族と分担する:介護の一部をリモートで支援し、対面ケアは日本在住の家族に任せる
日本で高齢者向けに特化した相談機関(地域包括支援センター等)は親の住む市区町村に存在するため、帰国の際に事前に把握しておく価値がある。
日本語対応のオーストラリア介護施設
シドニー・メルボルン・ブリスベンには日本人コミュニティが集まるエリアがあり、日本語対応の介護施設が存在する。ただし入居費用は民間施設で週1,000〜2,500AUD(約10万〜25万円)程度が目安で、決して安くない。
日本人コミュニティの集まるエリアでは「高齢日本人向けコミュニティサポート」を行うNPOも活動しており、在住者向けの情報網から最新情報を得ることができる。
早めの準備が重要
介護問題は「なってから考える」では遅い。親が70代のうちに、日本とオーストラリアの両方の選択肢を整理しておくことが、後になって慌てない備えになる。