Kaigaijin
海外在住日本人のメディア
文化

オーストラリアのアンザックデー——戦争の記憶を「飲んで悼む」文化の意味

4月25日のAnzac Day(アンザックデー)は、オーストラリアで最も重要な追悼の日。早朝の式典とその後のパブ飲みという一見矛盾した行動は、実は深い意味を持つ国民文化だ。

2026-07-22
Anzac Day戦争追悼オーストラリア文化

この記事の日本円換算は、1AUD≒97円で計算しています(2026年5月時点)。為替は変動するので、現地通貨の金額を基準にしてください。

4月25日、シドニーのマーチン・プレイスは夜明け前から人で埋まる。ドーンサービス(日の出式典)と呼ばれる追悼式典が行われ、退役軍人や一般市民が集まる。式典が終わると、人々はパブへ向かい、朝から酒を飲む。この流れが「Anzac Day」だ。

初めて見る外国人には不思議な光景に映るかもしれない。

Anzac Dayとは何か

1915年4月25日、オーストラリア・ニュージーランド軍(ANZAC)は第一次世界大戦のガリポリ作戦(現在のトルコ)に参戦した。激しい戦闘で多くの兵士が命を失い、撤退を余儀なくされた。軍事的には失敗の作戦だったが、この経験がオーストラリアとニュージーランドの「国民意識の形成」に繋がったとされている。

以来4月25日はAnzac Dayとして国家祝日になり、全国の戦争記念碑で式典が行われる。

「マタガジ(Two-up)」というギャンブル

Anzac Dayにパブで行われる風物詩がTwo-up(ツーアップ)だ。2枚のコインを空中に投げ、表裏を当てる単純なギャンブルで、通常は違法だがAnzac Dayに限って公認される。戦時中の兵士たちが時間潰しにやっていたとされており、伝統として続いている。

「兵士たちが死の前にやっていたギャンブルを、今日という日にやる」という意味が込められている。

日本人にとってのAnzac Day

日本はオーストラリア・ニュージーランドと第二次世界大戦で交戦した。日本軍捕虜の扱い、タイ・ビルマ鉄道建設への強制労働などは、オーストラリア人の歴史認識の一部になっている。

日本人としてAnzac Dayをどう受け止めるかは個人次第だが、「自分が関係ない日」として無視するのとは別に、参加して追悼の意を示す在住日本人もいる。オーストラリアに住む以上、この日が持つ重みを知っておくことは、現地社会との関係をより深める起点になる。

式典は誰でも参加でき、制服や軍服でなくても問題ない。記念碑の前で黙祷する時間は、どの国籍の人間でも静かに共有できる瞬間だ。

コメント

読み込み中...