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文化・社会構造の分析

DIYが当たり前の国——「自分でやる」文化が生活コストを左右する

オーストラリアでは家の修理も組み立て家具も自分でやるのが普通。職人を呼ぶと高くつくこの社会で、DIY文化がなぜ根づいたのか、その経済的な合理性を読み解く。

2026-08-24
DIY労働コスト生活住まい

この記事の日本円換算は、1AUD≒113円で計算しています(2026年6月時点)。為替は変動するので、現地通貨の金額を基準にしてください。

オーストラリアで生活していると、人々が驚くほど何でも自分でやることに気づく。棚を作り、壁を塗り、ちょっとした水回りの修理もこなす。週末のホームセンターは、工具や資材を買う人でにぎわう。日本では業者に頼むようなことを、ここでは「自分でやる」のが普通だ。このDIY文化には、はっきりした経済的な理由がある。

人を呼ぶと、とにかく高い。それがこの国でDIYが根づいた最大の動機だ。

人件費が高い社会の宿題

オーストラリアは賃金水準が高い。これは働く人にとっては良いことだが、サービスを受ける側にとっては「人に頼むと高くつく」社会を意味する。

ちょっとした修理で職人を呼ぶと、出張費に作業費が乗って、思いのほかの金額になることがある。しかも、人手不足の職種では予約が取りにくく、来てもらうまで待つこともある。高くて、待たされる。だったら自分でやってしまおう——この計算が、社会全体で働いている。DIYは趣味である前に、家計防衛だ。

「自分で直せる」が前提の住宅

この文化に合わせて、住環境の方もDIYしやすくできている面がある。ホームセンターには家庭で扱える資材や工具が豊富にそろい、説明も親切だ。組み立て式の家具や、初心者向けのキットも充実している。

つまり、「専門家でなくても、ある程度のことは自分でできる」仕組みが社会に用意されている。需要があるからこそ供給があり、供給があるから需要がさらに広がる。DIYが当たり前という前提が、それを支えるインフラを育ててきた。

「自分の手でなんとかする」気質

DIYの広がりは、経済の論理だけでは説明しきれない。広い大陸で、すぐには助けの来ない環境を生き抜いてきた歴史が、「自分のことは自分でなんとかする」という気質を育てた。

何かが壊れたとき、まず自分で直せないかを考える。この自立志向は、開拓の時代から続くものだ。DIYは、その気質が現代の暮らしに表れた形だとも言える。高い人件費という現実と、自立の気質が、ぴたりと噛み合っている。

移住者がDIYと付き合う

日本から来た人にとって、最初はハードルが高く感じるかもしれない。だが、簡単な棚の組み立てや壁掛けくらいから始めれば、コツはつかめる。動画や店員のアドバイスを頼りに、少しずつできることを増やしていけばいい。

無理に全部を自分でやる必要はない。電気や配管など、資格や安全が関わる作業は専門家に任せるべきだ。だが、「人に頼むと高い」社会では、自分でできる範囲を広げるほど、お金も時間も自由になる。DIYは、この国で賢く暮らすための、実用的なスキルだ。

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