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オーストラリアのブッシュファイアシーズン——2019年の黒い夏と在住者の備え

2019-20年の「Black Summer」では約1,860万ヘクタールが焼失した。ブッシュファイアの発生メカニズム、危険度の見方、在住者が取るべき準備と避難行動を解説する。

2026-05-05
ブッシュファイア防災気候安全

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2019年9月から2020年2月にかけて、オーストラリア南東部を襲った「Black Summer」。焼失面積は約1,860万ヘクタール——九州・四国・中国地方を合わせた面積に相当します。33人が死亡し、推定30億匹の野生動物が犠牲になりました(WWF推計)。

ブッシュファイアは「異常事態」ではない

オーストラリアの植生はもともと火に適応しています。ユーカリの木は樹皮に油分を多く含み、火災後に急速に発芽する仕組みを持っている。先住民アボリジナルの人々は何千年にもわたって「計画的な野焼き(cultural burning)」を行い、下草を管理してきました。

つまり、オーストラリアの森林は「燃えること」を前提に存在しています。ブッシュファイア自体は自然のサイクルの一部です。

問題は、その規模と頻度が気候変動によって増大していることです。平均気温の上昇と降水量の減少が、乾燥した植物(燃料)を増やし、火が大規模化しやすい条件を作っている。Black Summerは、この傾向が極端な形で現れた事例でした。

シーズンと地域

ブッシュファイアシーズンは地域によって異なります。

地域主なシーズン
NSW、VIC10月〜3月
QLD北部7月〜11月
WA南部11月〜4月
SA11月〜3月

シドニーやメルボルンの都市部が直接燃えることは稀ですが、郊外のbushlandに接するエリアは火災リスクがあります。

Fire Danger Rating

2022年9月から、オーストラリア全国統一のFire Danger Rating(火災危険度評価)システムが導入されました。

レベル意味
No rating灰色通常
Moderate注意
High警戒が必要
Extremeオレンジ火災発生時の行動計画を確認
Catastrophic最も安全な行動は「その地域を離れること」

「Catastrophic」が発令された場合、消防当局は「fire cannot be controlled(火災は制御不能)」と明言します。Black Summerでは、NSWで複数回Catastrophicが発令されました。

Fire Danger Ratingは各州の消防局ウェブサイト(NSW RFS、CFA Victoria等)とBureau of Meteorology(気象局)で確認できます。

在住者の備え

ブッシュファイアリスクがあるエリア(bushlandに隣接する住宅地)に住む場合、以下の準備が推奨されています。

Bushfire Survival Plan: NSW RFS(Rural Fire Service)のテンプレートに沿って避難計画を作る。Black Summer以降、「Catastrophic条件では必ず避難(Leave early)」がメッセージの主流です。

家の周囲の整備: 建物から10メートル以内の枯れ葉・枯れ枝を除去する。非常用持ち出し品はパスポート、保険証書、薬、3日分の水と食料、ウールの毛布(化繊は溶ける)。

煙害と保険

直接的な火災被害がなくても、煙害は広範囲に影響します。Black Summerではシドニーのでもさえ大量のPM2.5にさらされました。住宅保険はブッシュファイアの被害をカバーしますが、火災リスクの高いエリアでは年間の保険料がAUD 5,000〜10,000(約50万〜100万円)に達することがあります。

ブッシュファイアは「起きるかどうか」ではなく「いつ起きるか」の問題です。シーズン前に計画を立て、Fire Danger Ratingを日常的にチェックする。それがオーストラリアの夏の過ごし方です。

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