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グレートバリアリーフの今——白化現象と在住者が見る環境問題の現実

グレートバリアリーフは2016年以降、大規模な白化現象が繰り返されている。その原因・現状と、オーストラリア在住者が感じる環境問題の温度感を解説。

2026-04-29
オーストラリアグレートバリアリーフ環境サンゴ礁気候変動

グレートバリアリーフは「世界最大のサンゴ礁」として教科書に載るが、その状態が年々変化していることは日本ではあまり伝わっていない。

オーストラリア海洋科学研究所(AIMS)の2023年報告によると、グレートバリアリーフ全体のサンゴ被覆率は2022〜2023年の調査で過去最高水準に回復した地域がある一方、2024年の記録的な海水温上昇により再び大規模な白化現象が起きた。「回復と白化の繰り返し」が現状だ。

白化現象とは何か

サンゴは光合成を行う藻類(褐虫藻)と共生している。海水温が通常より1〜2℃高い状態が続くと、サンゴは藻類を排出してしまい白くなる——これが白化現象(ブリーチング)だ。

白化したサンゴは死んでいるわけではなく、温度が正常に戻れば回復することがある。問題は「海水温の高い状態が続く期間」だ。2〜3か月以上続くと、白化したサンゴの多くが死滅する。

2016年・2017年・2020年・2022年・2024年と、大規模な白化が繰り返されている。これだけ頻繁に白化が起きると、サンゴが回復するための時間が確保できなくなる。

オーストラリア在住者の感覚

ケアンズやポートダグラスを拠点にダイビング・シュノーケリングをしているオーストラリア在住者の間では、「10〜15年前と比べて見えるサンゴの状態が違う」という実感を持つ人が多い。

観光業では「今のうちに見に行くべき」という文脈でグレートバリアリーフを売り出すケースが増えており、これは「消える前に」という焦燥感と観光業の利害が混ざり合った複雑なメッセージになっている。

環境団体はより積極的な保全策(石炭採掘規制・農業排水規制)を求め、政府・農業・観光・採掘業のステークホルダー間の利害調整が続いている。

UNESCOと「危機遺産」リスト

ユネスコは2021〜2022年にグレートバリアリーフを「危機にさらされている世界遺産」リストに加える検討を行ったが、オーストラリア政府の強い反対と保全策のコミットメント提出により、正式なリスト入りは見送られた。

「危機遺産」指定は観光業への打撃になることから、政府は指定を避けるための外交的努力を続けた。「環境保全」と「経済的利益」のバランスをどうとるかという問いが、この問題の核心にある。

在住者として何ができるか

ケアンズ・ポートダグラスのダイビングショップの中には、「認定エコツアー」として環境負荷の低い方法でリーフを案内する業者が増えている。環境保全に取り組む業者を選ぶこと、サンゴを傷つけない行動(サンゴへの接触禁止・日焼け止めの選択等)が、個人レベルでできることになる。

問題の規模は個人の行動を超えているが、実際にリーフを見てその美しさと変化を体験することは、環境問題を「抽象的な話」から「具体的な現実」に変える力がある。

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