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文化・社会

アボリジナル・ファーストネイションズへの敬意——在住外国人が学ぶオーストラリアの「下地」

オーストラリアでは公式場面でのWelcome to Countryが常態化。アボリジナル文化への敬意の表し方と、在住外国人が理解すべき歴史的背景を解説する。

2026-04-19
アボリジナルファーストネイションズ多文化歴史オーストラリア在住

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オーストラリアの会議・式典・スポーツイベントが始まる前に、こんな言葉が読み上げられます。「We acknowledge the Traditional Custodians of this land(この土地の伝統的な管理者に敬意を表します)。」初めて聞いた日本人の多くが、少し戸惑います。これが何を意味するのかを知ると、オーストラリアという社会の一側面が理解できます。

Welcome to Country と Acknowledgement of Country

「Welcome to Country」は、その土地の Traditional Owners(先住民族の長老)が来訪者を迎えるセレモニーです。その土地に住む先住民コミュニティの代表が行う行為で、他者が代わりに行うことはできません。

「Acknowledgement of Country」は、非先住民(または他地域の先住民)が「この土地の所有権・管理権が先住民族にある」ことを口頭で表明する行為です。会議の冒頭・大学の入学式・国会での演説など、公式の場で広く行われています。

これらは2000年代以降に急速に普及し、現在では多くのオーストラリアの職場・学校・公共機関で標準的な慣行になっています。

オーストラリア先住民族の現状

オーストラリアのアボリジナル・トレス海峡諸島民(先住民族)は、2021年国勢調査で約81万2,000人、総人口の約3.2%です。60,000年以上にわたって大陸に暮らしてきた人々が、植民地化(1788年以降)によって土地・文化・家族を奪われた歴史があります。

「盗まれた世代(Stolen Generations)」は1970年代まで続いた政府政策で、アボリジナルの子どもが家族から強制的に引き離され、白人家庭・施設に預けられた時代のことです。2008年にラッド首相が正式に謝罪(国家としての Apology)を行いました。

在住外国人への影響

実生活では、大学・職場・地域コミュニティでのAcknowledgementに参加することがあります。違和感を感じた場合でも、場の文化として聞く姿勢が基本です。

旅行で内陸部(Northern Territory・ウルル等)を訪れる場合、一部の土地は入域許可(permit)が必要なアボリジナル所有地です。ウルル(エアーズロック)への登山は先住民族の要請を受けて2019年に禁止されています。禁止後も登ろうとする旅行者がいますが、これは現地コミュニティへの敬意の問題として広く認識されています。

理解の入口として

日本にいると「ファーストネイションズ」という概念は遠く感じますが、オーストラリアに住み始めると日常の中に確実に出てきます。

理解の入口として手に入りやすいのが、美術館・博物館のアボリジナルアートコレクションです。ドットペインティング・バーク絵画は視覚的に強烈で、それが意味する物語・土地との関係を解説付きで見ることができます。シドニーのAustralian Museum、メルボルンのMelbourne Museumに常設展示があります。

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