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文化・社会構造の分析

定年後、キャンピングカーで大陸を一周する——「グレイ・ノマド」という老後の選択

オーストラリアの退職者の一部は、家を売って(または貸して)キャンピングカーで旅を続ける「グレイ・ノマド」と呼ばれる生き方を選ぶ。その文化と経済的背景を紐解く。

2026-06-06
グレイノマドキャンピングカー老後退職文化

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日本では「老後は家でゆっくり」という像が強い。オーストラリアの退職後の風景は、少し違う。

道の駅にあたる「フリーキャンプサイト」や「キャラバンパーク」を転々としながら、大陸を走り続ける高齢者たちがいる。「グレイ・ノマド(Grey Nomads)」と呼ばれる人たちだ。

広大な国土が生む選択肢

オーストラリアの国土は約769万平方キロメートル(日本の約20倍)。内陸部には長距離の未舗装路も含めた「ルート」が張り巡らされており、キャラバン(キャンピングトレーラー)かモーターホームで移動する文化が長く根付いている。

政府や地方自治体が整備した「フリーキャンプサイト」では無料あるいは数ドル程度でキャンプができる。水道・電源付きのキャラバンパークは一泊30〜60AUD(約2,910〜5,820円)程度。これが毎日続くと、都市部の家賃より格段に安くなる。

典型的なグレイ・ノマドのプロフィール

一般的に60代以上の退職者夫婦が多い。子育てが終わり、仕事も辞めた。家をそのまま保有しているケース、売却して旅の資金にしているケース、賃貸に出して家賃収入を旅費に充てるケースがある。

スーパーアニュエーション(老後積立)の受取が始まる60歳以降、こうした旅が経済的に成立しやすくなる。「スーパーが使えるようになったから、ずっとやりたかったことをする」という動機は、この文化の背景にある。

コミュニティの形成

キャラバンパークでは見知らぬ者同士が隣同士になり、焚き火の前で話し込むことがある。長期旅行者のSNSグループやフォーラムが存在し、「どのルートが良かった」「あの道路は洪水で通れない」といった情報共有が盛んだ。

旅を通じて「キャラバン仲間」ができ、毎年同じ場所で再会する、という人間関係が生まれることもある。定住しないことで生まれるコミュニティ——不思議な逆説だ。

日本人の視点から

「老後に家を離れて旅暮らし」は、日本的な老後観とは相当遠い。「子どもや孫の近くにいるべき」「施設に備えて貯金すべき」という価値観とは対極にある。

ただ、日本でも「バンライフ」や「車中泊旅行」への関心が高まっているように、「定住しない老後」は決して非現実的な発想ではなくなってきた。

オーストラリアのグレイ・ノマドは、老後の自由度を金ではなく空間で表現した形だ。広い国土があるから成立する、とも言える。でも「どこかへ向かい続ける」という衝動は、場所を選ばないかもしれない。

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