学校に行かない子どもたち——オーストラリアのホームスクーリングの実態
オーストラリアでは政府の承認を受けてホームスクーリングを選択できる。宗教的理由、地理的距離、教育哲学の相違——親たちが学校を選ばない理由と、その日常を探る。
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オーストラリアでは各州の教育省に登録することで、自宅で子どもを教育する「ホームスクーリング」が法的に認められている。
日本では学校外教育は「不登校」と結びついて語られることが多い。オーストラリアでは「選択」として機能している部分がある。
誰がホームスクーリングを選ぶか
理由は多様だ。
内陸部の農場や農村に住む家族にとって、最寄りの学校まで片道1時間以上という状況がある。「School of the Air(空の学校)」と呼ばれる遠隔授業制度もあるが、ホームスクーリングを選ぶ家族もいる。
宗教的・哲学的な理由も根強い。特定の宗教観に基づく教育を重視するキリスト教系コミュニティや、Waldorf・Montessori的な教育哲学を持つ家族がホームスクーリングを選ぶ例がある。
また近年では「学校でのいじめ・不安障害・発達特性」を理由に、学校教育が合わないと判断して切り替えるケースが増えているという(教育関係者のコメントより、推定)。
登録と監督の仕組み
ホームスクーリングを行うには、州の教育省に登録して承認を受ける必要がある。カリキュラムの提出、定期的な進捗報告、場合によっては訪問調査が求められる。
「野放し」ではなく、一定の監督体制のもとで行われる。ただし各州で要件が異なり、ニューサウスウェールズ州とビクトリア州では手続きの細部が違う。
ホームスクーリングコミュニティ
意外かもしれないが、ホームスクーリング家族の間には密なネットワークが存在する。定期的に子どもたちが集まって「コープ(共同学習グループ)」を作り、スポーツ・音楽・実験などを一緒に行う。
「家で孤立する」というイメージとは違い、コミュニティを作りながら学ぶ形が広がっている。フェイスブックグループや地域団体が情報源になっている。
大学進学はどうなるか
ホームスクーリングから大学への進学は不可能ではない。VCE(ビクトリア証明書)などの資格試験を受験することで、大学入学の基準を満たすルートがある。ただし通常の高校生と同じ競争に入るため、独学での準備が必要になる。
一部の大学はホームスクーリング出身者向けの特別選考を設けている場合もある(大学による)。
日本の文脈で考える
日本では「フリースクール」や「オルタナティブスクール」への関心は高まっているが、制度的な枠組みはまだ発展途上だ。オーストラリアのホームスクーリング制度は、教育の選択肢を広げた場合に何が起きるかを考えるひとつの事例になる。
「学校に行く」が唯一の正解ではない——そういう社会の設計は、どんな子どもを育てるのか。答えはまだ出ていない。