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カンガルー肉の経済学:国章の動物が食卓に上がる理由

オーストラリアの国章に描かれるカンガルーがスーパーで売られている現実。低コスト・低脂肪・サステナブルとされるカンガルー肉産業の実態を解説。

2026-04-12
カンガルー肉食文化サステナブルオーストラリア料理野生動物

この記事の日本円換算は、1AUD≒95円で計算しています(2026年4月時点)。

オーストラリアのスーパーマーケットで、カンガルー肉が普通に売られている。ウールワース(Woolworths)やコールス(Coles)の精肉コーナーに、ミンチ・ステーキ・ソーセージとして並んでいる。価格は牛肉より安く、1kg あたり10〜15AUD(950〜1,425円)前後が相場だ。

「国章の動物を食べていいのか」と思う人もいるが、オーストラリア人の多くにとってこれは特に矛盾でも何でもない。

カンガルーはなぜ食用になるのか

オーストラリアのカンガルー個体数は人間の人口を大きく上回る。農地の草を食い荒らし、牧場主との衝突が続いてきた歴史がある。管理された商業的な狩猟(カリング)は連邦・州政府の許可制で行われており、持続可能な管理の一環として位置づけられている。

環境負荷の観点からも注目されている。カンガルーは牛や羊と異なり、消化の過程でメタンガスをほとんど排出しない。温室効果ガスの削減文脈で「エコな肉」として論じられることもある。

栄養価と現地での扱い

カンガルー肉は高タンパク・低脂肪・低カロリーが特徴で、鉄分も豊富だ。スポーツ選手や健康志向の人たちに選ばれることが多い。ただし赤身が強いため、焼きすぎるとパサつく。ミディアムレアが推奨される。

日本人の在住者の間では「一度食べてみたが、独特の獣臭さがある」という声が多い。マリネや香辛料で臭みを抑えるのが一般的な調理法で、BBQで塊を焼くより薄切りや挽肉の形で食べる方が食べやすいとされる。

観光客向けとローカル向けの二重構造

シドニー・メルボルンのレストランでは、カンガルー肉を「オーストラリアの体験」として観光客向けに提供している店が多い。この場合は1皿30〜45AUD(2,850〜4,275円)程度になることもある。

一方でスーパーの食材として日常的に消費するのは、主に若い世代・低所得層・環境意識の高い層だ。「カンガルー肉を普通に食べる」かどうかはオーストラリア人の中でも個人差がある。

ペット向けと人間向けの混在

一つ覚えておきたいのは、オーストラリアではカンガルー肉がペットフード(犬・猫用)としても大量に流通していること。スーパーの棚で人間向けと犬用が隣り合っていることもあり、初見では少し戸惑う。

在住期間が長くなると「そういえばカンガルー肉、最近食べてないな」という感覚になる人も多い。珍しいものとして意識しなくなることが、現地生活に慣れた証かもしれない。

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