「無料で医者にかかれる」は本当か——メディケアと民間保険の間に落ちるもの
オーストラリアには国民皆保険「メディケア」があり、多くの診察は無料または低負担で受けられる。だが歯科・眼科・精神科は原則対象外で、民間保険のコストと合わせると医療費の全体像は複雑だ。
この記事の日本円換算は、1AUD≒97円で計算しています(2026年5月時点)。為替は変動するので、現地通貨の金額を基準にしてください。
「オーストラリアはメディケアがあるから医療費が安い」——これは半分正しく、半分は誤解を含む。
メディケアがカバーするもの
メディケアはオーストラリアの国民皆保険制度で、市民権・永住権保持者が対象だ(一部の国とのメディケア相互協定で短期滞在者も利用可能な場合がある)。
GP(かかりつけ医)の診察、公立病院での入院・治療、各種検査(血液検査・X線等)は「バルクビリング(Bulk Billing)」という制度を利用すると、患者負担がゼロになる場合がある。バルクビリングを行うGPクリニックがメディケアの報酬で直接請求するため、患者の窓口負担がなくなる仕組みだ。
ただしバルクビリングを実施しているクリニックが地域によって少なく、特にシドニー・メルボルンでは「バルクビリングのGPを探すのが難しい」状況が続いている(各メディアの報告より)。
メディケアがカバーしないもの
歯科・眼科・理学療法・精神科(一部を除く)・鍼灸——これらは原則としてメディケアの対象外だ。
歯科治療はオーストラリアでは非常に高く、例えば虫歯の治療が数百AUD、インプラントなら数千AUDになることがある(歯科・治療内容によって大きく変動)。
定期的に歯医者に通っていると、年間1,000〜2,000AUD(約97,000〜194,000円)以上の自費負担になるケースは珍しくない。
民間保険(プライベートヘルスインシュアランス)
民間保険は「病院保険(Hospital Cover)」と「追加給付保険(Extras Cover)」の二段階構成が基本だ。歯科・眼科・理学療法などをカバーするには、Extras Coverへの加入が必要になる。
月額保険料は個人・家族構成・カバー範囲によって異なるが、個人で月100〜250AUD(約9,700〜24,250円)程度が目安とされることが多い(保険商品・年齢によって変動)。
「民間保険に加入していても、実際に使うと想定より返金が少なかった」という体験談は多い。カバーの上限額、適用条件、「ギャップ(Gap)」と呼ばれる実費負担部分——細かい条件を確認せずに加入するのは危険だ。
日本人の場合
永住権・市民権がなければメディケアは使えない(一部の相互協定対象者を除く)。ワーホリ・留学生は民間保険への加入が必要になる(ビザ条件によって強制加入の場合もある)。
日本からの出張者・観光者は旅行保険でカバーするケースが多い。ただし「旅行保険が想定外の治療をカバーしなかった」という事例もあり、保険内容の事前確認は必須だ。
「無料で医療が受けられる国」というイメージと現実のギャップを知っておくと、オーストラリアでの医療費計画が立てやすくなる。