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「この土地は誰のものか」——アボリジナル土地権(ネイティブタイトル)の現在地

1992年のマボ判決でオーストラリアの法律は変わった。「先住民には土地への権利がある」という原則が認められたのだ。だがその実践はどれほど進んでいるのか。複雑な現実を整理する。

2026-06-09
ネイティブタイトルアボリジナル土地権マボ判決先住民

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オーストラリアで「土地を買いたい」と思ったとき、特定のエリアでは「ネイティブタイトル」が複雑に絡んでくることがある。

ネイティブタイトル——これは1992年の歴史的な最高裁判決(マボ判決)で認められた、先住民アボリジナル・トレス海峡諸島民が土地に持つ伝統的な権利のことだ。

マボ判決以前

それまでのオーストラリアの法律には「テラ・ヌリウス(Terra Nullius)」という考え方が根底にあった。「無主の土地」、つまり誰も所有していない土地にヨーロッパ人が定住したという法的フィクションだ。

エディ・マボとクレイグ・マレー島の住民たちは、この法理に異議を唱えて裁判を起こし、最高裁が「テラ・ヌリウスは誤りだ」と判断した。この判決はオーストラリアの歴史において画期的な転換点と評価されている。

ネイティブタイトルは「絶対」ではない

判決後に制定されたネイティブタイトル法(1993年)で制度化されたが、権利の認定には複雑な手続きが必要だ。

先住民の側が「継続的につながりを維持してきた」という証明をしなければならない。植民地化によって土地から追い出された歴史を持つにもかかわらず、継続性の証明が求められるという矛盾を、批判者は指摘し続けている。

また、ネイティブタイトルが認められても、土地を「所有」する権利とは異なる場合が多い。立ち入りの権利・儀式を行う権利・資源を管理する権利など、内容が限定されることもある。

鉱業権との衝突

特に問題になるのが、鉱業開発との衝突だ。内陸部にはネイティブタイトル請求中あるいは認定済みの土地が広がっており、そこに鉄鉱石や金などの資源が眠っている。

開発側は「先に協議する義務(Future Act手続き)」を負うが、合意に達しない場合、仲裁プロセスに進む。力のバランスは大企業側に傾きやすいという批判は今も続いている。

2020年には、リオ・ティント(世界的な鉱山大手)がネイティブタイトル認定地内の洞窟を爆破した問題が国際的に注目された。

「ウェルカム・トゥ・カントリー」の意味

今やオーストラリアのイベントや会議では、開始時に「ウェルカム・トゥ・カントリー(その土地の伝統的な所有者への敬意を表す挨拶)」が行われることが多い。

形式的にこなしているだけと見る人もいれば、無意味でないという人もいる。ただ確かなのは、「この土地には持ってきた権利はない」という認識が、オーストラリア社会に徐々に浸透しつつあることだ。

在住日本人がこの複雑な歴史を完全に理解するのは難しい。でも、ウェルカム・トゥ・カントリーの言葉を聞いたとき、「なぜこれが必要なのか」を少し考える余裕を持てるかどうか——それが第一歩だと思う。

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