シドニーの家賃危機。都心から1時間離れても変わらない理由
シドニーの家賃は過去5年で40%以上上昇した。郊外に逃げても安くならない構造的な理由がある。在住者が直面する住宅危機の現実を数字で見る。
この記事の日本円換算は、1AUD≒96円で計算しています(2026年4月時点)。為替は変動するので、現地通貨の金額を基準にしてください。
シドニーのCBD(中心業務地区)から電車で1時間。パラマタやペンリスのエリアまで来れば、家賃は安くなると思っていた。実際は違った。
2026年現在、シドニー都市圏全体で1ベッドルームのアパートを借りようとすると、週AUD550〜650(約52,800〜62,400円)が相場だ。これは月換算でAUD2,200〜2,600(約211,200〜249,600円)になる。東京23区の相場と比べても決して安くない。
数字で見る家賃上昇
不動産データ会社CoreLogicのデータによると、シドニーの家賃中央値は2020年から2025年にかけて約40%上昇した。同期間の賃金上昇率は約20%前後で、明確に家賃の上昇が賃金を上回っている。
週AUD600の1ベッドルームと週AUD900の2ベッドルームが相場のシドニーで、可処分所得に占める住居費の比率は多くの中低所得世帯で30%を超えている。住居費が手取りの30%を超えると「住居費負担が重い」とされる国際基準があるが、シドニーでそれは普通になった。
なぜ郊外でも安くならないのか
シドニーの郊外家賃が安くならない理由の一つは移民の急増だ。2023〜2024年のオーストラリアへの純移民数は約50万人に達し、その多くがシドニーとメルボルンに集中した。需要が供給を大幅に上回っている。
もう一つはインフラ整備の遅れだ。郊外から都心に通勤できる公共交通が十分に発達していない地域では、郊外への移住自体が難しい。車が必要なエリアに住むと、交通費と駐車代が家賃の節約分を相殺する。
加えて建設コストの上昇がある。資材費と人件費の高騰で新築物件の供給が追いつかず、既存物件の家賃交渉力が大家側に傾いたままになっている。
シェアハウスが唯一の現実解
ひとり暮らしの場合、多くの人が経済的に追い詰められる。シェアハウスが事実上の「現実的な選択肢」になっている。
シドニーのシェアハウスの相場は1部屋あたり週AUD250〜380(約24,000〜36,500円)。光熱費込みの物件も多く、個室を持てるという条件でひとり暮らしより大幅に安くなる。
ただし、大人になってからのシェアハウス生活は精神的なコストがある。キッチン・バスルームの共用、生活リズムの違い、ゴミ出しや掃除のルールをめぐるトラブル。慣れている人もいれば、プライバシーを重視する人には相当のストレスになる。
日本人駐在員と現地採用の格差
シドニー在住の日本人でも、住居状況は立場によって大きく異なる。駐在員は多くの場合、会社負担の住居手当があり、Mosman、Lane Cove、Chatswood周辺のアパートに住む。
一方で現地採用や語学留学後に就職した人たちは、住居費を全額自己負担する。現地採用の年収がAUD60,000〜80,000(約576〜768万円)の場合、税引き後から家賃を払うと生活はかなり厳しい。
「シドニーに住んでいる日本人」といっても、生活実態は全く違う。SNSで見えるシドニーライフが駐在員のそれである場合、参考にすべき数字が全く異なることに注意が必要だ。
次の動き
シドニーから見切りをつけてアデレードやブリスベンに移る人が増えている。アデレードの1ベッドルーム週相場はAUD400前後とシドニーより3割安い。生活コストも低く、日本人コミュニティも一定数いる。
シドニーへの執着がなければ、オーストラリアの「別の顔」を持つ都市を選択肢に入れることが現実的な解になりつつある。