クラスの半分が移民の子——オーストラリアの公立学校で起きている多文化教育の現実
シドニーやメルボルンの公立学校では、クラスの半数以上が英語以外を母語とする家庭の子どもという状況が普通にある。その環境が子どもと教師にどんな影響を与えているか。
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シドニー西部やメルボルン南東部の公立学校を訪れると、運動場で飛び交う言語が英語だけでないことに気づく。広東語・ベトナム語・アラビア語・ヒンディー語——子どもたちは友人同士では母語で話し、授業では英語に切り替える。
「多文化」は理念ではなく、日常の風景だ。
EAL/D教育とは
EAL/D(English as an Additional Language or Dialect)は、英語を第一言語としない生徒への言語支援プログラムだ。新着移民の子どもや、家庭では英語を使わない生徒が対象で、専任の教師がクラスサポートや個別指導を行う。
オーストラリアの公立学校では、EAL/Dの学習者比率が高い学校も多く、学校によっては全生徒の50%以上が対象というケースもある(教育省データより推定)。
教師への負荷
多様な母語背景を持つ生徒が混在するクラスで「全員に等しく教える」のは難しい。英語が流暢な生徒と、来豪したばかりでほとんど話せない生徒が同じ授業を受けることもある。
教師は言語支援だけでなく、文化的背景の違い・家庭環境の違い・学習スタイルの違いに対応する必要がある。EAL/D担当教員の確保は多くの学校で課題になっており、専門スキルを持つ教師は供給不足の傾向がある(教育省レポートより)。
子どもたちが得るもの
多文化環境で育った子どもたちの多くは、「文化的な柔軟性」を自然に身につける。複数の言語が聞こえる環境で育つことで、「違うのが普通」という感覚を持ちやすい。
「クラスに中国人もインド人もソマリア人もいた。それが普通だった」という体験は、大人になってからの対人感覚に影響する、という声は長期在住者から聞かれる。
日本人の子どもの場合
日本からの赴任・移住で子どもを公立学校に通わせる場合、最初の数ヶ月は言語の壁が大きい。ただ、EAL/Dサポートがある学校では、英語が話せない状態で入学しても対応してもらえる。
日本人の子どもにとって、「クラスで自分だけが日本人」という状況は孤独に感じることもあるが、「他の子も外から来た子どもがいる」環境であれば、多様性の中に入りやすい面もある。
多文化主義の「試験場」
学校は多文化主義の理念が現実と衝突する最前線だ。ここで起きる摩擦——言語の壁、価値観の違い、宗教上の要望——は、社会の縮図として機能する。
公立学校の現場を知ることは、オーストラリア社会の「今」を知ることにもつながる。