学区が家賃を決める国——公立校の「無料」が高くつくからくり
オーストラリアの公立校は授業料無料。だが人気校の学区に住むと家賃が跳ね上がる。教育の「無料」が住居費に化ける構造と、移住家庭が知るべき選択を整理する。
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オーストラリアの公立校は授業料が無料、と聞くと、教育費の心配がない国に思える。だが現実はそう単純ではない。人気の公立校に子どもを通わせたい家庭は、その学区内に住む必要があり、そこの家賃や住宅価格が周辺より高い。授業料がゼロでも、住居費という別の形で教育費を払うことになる。
「無料の教育」が「高い家賃」に化ける——このからくりを知らずに移住すると、家計設計を誤る。
公立校は「住所」で決まる
多くの公立校は、通学できる範囲を学区で区切っている。原則として、その学区内に住んでいることが入学の条件になる。つまり、行きたい学校が決まれば、住む場所も実質的に決まる。
評判の良い公立校の学区は、住宅需要が集中する。同じ間取り・同じ通勤距離でも、人気校の学区かどうかで家賃が変わる。教育の質を求める親が、住居市場で競り合うからだ。授業料の代わりに、家賃という入場料を払う構造になっている。
なぜ「無料」がコストを生むのか
授業料を取らないぶん、学校間の差は別のところに表れる。設備、立地、生徒の家庭環境、評判。これらが学区の人気を左右し、人気が住宅価格に転嫁される。
無料であるがゆえに、価格による選別が「学費」ではなく「住居費」で起きる。お金のある家庭は良い学区に住み、そうでない家庭は外側に住む。授業料無料という制度は、教育の平等を保証しているように見えて、住む場所を通じて静かに選別を働かせている。
私立という別の選択肢
オーストラリアには私立校も多く、こちらは授業料がかかる。学校によって費用の幅は大きく、宗教系や伝統校など種類も豊富だ。
ここで家庭は二つの道のあいだで選ぶことになる。人気公立校の学区に住んで高い家賃を払うか、外側に安く住んで私立の授業料を払うか。どちらが得かは、家賃差と授業料、通勤、子どもの数によって変わる。「無料か有料か」ではなく、「どの形でコストを払うか」の選択だ。
移住家庭の現実的な進め方
子連れで移住するなら、住む場所を決める前に学校を調べるのが順序として正しい。先に家を決めてから学区を確認すると、希望の学校に入れない、あるいは引っ越し直しになることがある。
公立校の評判、学区の境界、その学区の家賃相場。この三点をセットで調べてから住居を決める。教育費がゼロに見えても、住居費に組み込まれているだけだと理解しておけば、後から「思っていたより高くついた」と慌てずに済む。無料の教育の本当の値段は、家賃明細に書いてある。