オーストラリアのスーパーアニュエーション——日本の年金と何が違うか
オーストラリアの強制積立型老後資金制度「スーパーアニュエーション」の仕組み。現在の拠出率・税制優遇・離職時の扱い。日本の厚生年金・iDeCoとの比較。
この記事の日本円換算は、1AUD≒95円で計算しています(2026年4月時点)。
オーストラリアには「スーパーアニュエーション(Superannuation)」という、日本の厚生年金とは異なる老後資金制度がある。
仕組みを理解せずに働くと、帰国時に「思ったより資産がない」または逆に「忘れていた積立を受け取れる」という状況になりやすい。
スーパーアニュエーションとは
雇用主が従業員の給与の一定割合を、専用口座(スーパーファンド)に拠出する強制積立制度だ。
拠出率:2025〜2026年現在、11.5%(2023年7月から段階的に引き上げられ、2025年7月から12%になる予定)。
例えば年収AUD 60,000(約570万円)の場合、雇用主がAUD 6,900(約65万円)を毎年スーパーファンドに積み立てる。これは給与とは別に支払われる(給与に含まれず、上乗せで積み立てられる)。
日本との主な違い
| 比較項目 | 日本の厚生年金 | オーストラリアのSuper |
|---|---|---|
| 仕組み | 公的保険(賦課方式:現役世代が高齢者を支える) | 個人積立(確定拠出型:自分の積立を自分が受け取る) |
| 拠出負担 | 労使折半(各約9〜10%) | 雇用主が11.5%(従業員負担なし) |
| 運用 | 国が管理(GPIFが運用) | 個人が選ぶファンドで運用(株式・債券等) |
| 受取開始 | 原則65歳(繰り下げ可) | 原則60歳(Preservation Age:2025年時点) |
| 受取形態 | 毎月の年金 | 一括受取・年金形式どちらも可 |
| 個人の資産所有 | 公的制度への権利 | 個人名義の口座に積み立てられる資産 |
日本の厚生年金は「将来受け取る権利」だが、スーパーはあなた個人の口座にある「あなたの資産」だ。
税制優遇
スーパーアニュエーションへの拠出は税制上の優遇がある。
雇用主からの強制拠出(SG:Superannuation Guarantee)は、スーパーファンド内での課税率が通常所得税より低い(15%が標準)。個人が追加で拠出する場合も、一定額まで税制優遇がある。
帰国する場合のスーパーの扱い
ここが日本人在住者に最も重要なポイントだ。
オーストラリアの永住権・市民権を持たない一時ビザで働いた場合、出国後に「DASP(Departing Australia Superannuation Payment)」申請ができる。積み立てたスーパーを解約して受け取れる。
ただし課税が発生する:
- 非課税コンポーネント:0%(稀)
- 課税コンポーネント:65%の源泉徴収(外国人が出国時に受け取る場合の高税率)
「積み立てたお金が65%課税される」のは痛い。でも申請しないと放置口座になる。一定期間動きがないスーパーはATO(税務当局)に引き渡されるが、後から請求自体は可能だ。
帰国前にスーパーファンドの状況確認と、DASP申請のタイミングを計算しておくことが損失を防ぐ手順になる。