オーストラリアの確定申告——TFN、Tax Return、ワーキングホリデーで帰国後に返金される仕組み
オーストラリアのTFN取得・Tax Return提出手順から、ワーキングホリデーのBackpacker Tax・Superannuation帰国時申請・MyGovの使い方まで解説。
この記事の日本円換算は、1AUD≒97円で計算しています(2026年4月時点)。為替は変動するので、現地通貨(AUD)の金額を基準にしてください。
「ワーキングホリデーで働いて、帰国後に税金が返ってきた」という話を聞いたことがある人も多いはずだ。
実はオーストラリアの税制では、年間を通じて申告をすると源泉徴収が多すぎた場合に還付が受けられる。ワーキングホリデービザ(WHV)保持者でも、適切に申告すれば一部が返ってくるケースがある。
この記事では、オーストラリアの確定申告の仕組みから、スーパー(Superannuation)の帰国時請求まで整理する。
まずTFN(Tax File Number)を取得する
オーストラリアで働く全ての人が必要なのがTFN(Tax File Number)。日本のマイナンバーに相当する9桁の個人納税番号だ。
取得方法:
- ATO(Australian Taxation Office)の公式サイトからオンライン申請
- 申請から番号通知まで通常28日以内
- 無料(申請料は一切かからない)
TFNなしで働いた場合、雇用主は最高税率(47%)で源泉徴収しなければならない。必ず最初に取得しておくこと。
オーストラリアの税率——居住者と非居住者の違い
オーストラリアでは「税務上の居住者(Tax Resident)」か「非居住者(Non-Resident)」かで税率が大きく変わる。
税務上の居住者の税率(2024-25年)
| 年収(AUD) | 税率 |
|---|---|
| AU$18,200まで | 0%(非課税枠) |
| AU$18,201〜AU$45,000 | 19% |
| AU$45,001〜AU$120,000 | 32.5% |
| AU$120,001〜AU$180,000 | 37% |
| AU$180,001超 | 45% |
※ Medicare Levy(公的医療制度の財源)として別途2%が追加される。
非居住者の税率
| 年収(AUD) | 税率 |
|---|---|
| AU$120,000まで | 32.5%(非課税枠なし) |
| AU$120,001〜AU$180,000 | 37% |
| AU$180,001超 | 45% |
非居住者にはAU$18,200の非課税枠が適用されない。この差が大きい。
居住者か非居住者かの判定は、滞在日数だけではなく「生活の中心がどこか」で判断される。6ヶ月以上継続して滞在していれば通常は居住者扱いになるが、ケースバイケースで判断が変わる。
Backpacker Tax(バックパッカー税)の変遷
ワーキングホリデービザ(Subclass 417・462)保持者は、一時期「非居住者」として一律32.5%で課税されていた(Backpacker Tax制度、2017年導入)。
しかし2023年12月の最高裁判決(Addy v Commissioner of Taxation)で、特定の国籍の人に対する差別的課税として一部が違法とされ、税率の適用方法が変更された。
現在(2025年時点)の扱い:
- ワーキングホリデービザ保持者でも、税務上の居住者と判定される場合は通常の居住者税率が適用される
- 185日以上継続して同じ場所で働いていた場合などは居住者とみなされやすい
- ATOは「Individual income tax rates」ページで最新情報を公開している
過去にBackpacker Tax(32.5%)で源泉徴収された場合、税務上の居住者と認められれば差額が還付される。帰国後でも申告できる(期限は翌々年の10月31日が目安)。
Tax Returnの提出——7月〜10月が申告シーズン
オーストラリアの税務年度は7月1日〜翌6月30日。翌年の7月1日から申告受付が始まり、自分で申告する場合の期限は10月31日。
MyGov(ATO連携)で申告する手順
- myGov(my.gov.au)アカウントを作成・ログイン
- ATOサービスと連携(Linked Services)
- pre-fill dataの取り込み: 雇用主・銀行・Superファンドの情報が自動で入力される
- 控除(Deductions)の入力: 仕事関連の費用(車・制服・自己啓発等)
- 申告・送信
- 還付の受取り: 還付がある場合、通常2〜3週間で指定銀行口座に振込
帰国後に日本から申告する場合も、myGovのアカウントさえあればオンラインで手続きできる。
主な控除項目
| 控除の種類 | 内容 | 注意点 |
|---|---|---|
| 仕事関連費用 | 工具・制服・クリーニング代等 | レシート保管必須 |
| 在宅勤務費用 | 光熱費・通信費(一部) | 計算方式を選択 |
| 自己啓発費 | 仕事に関連する研修・資格取得費 | 現在の仕事との関連が必要 |
| 車の使用 | 仕事での移動に使った車両費 | ログブック等で証明 |
| 税理士費用 | 前年の申告に使った費用 | 翌年の申告で控除 |
農場やホスピタリティ業界で働くワーキングホリデーの人の場合、仕事着(安全靴・手袋等)の費用は控除対象になる可能性がある。
Superannuation(スーパー)——帰国後に全額を請求できる
Superannuationは、雇用主が従業員の給与の11.5%(2024年7月〜)を義務的に積み立てる年金制度。日本の厚生年金に相当するが、日本とオーストラリアの間には社会保障協定があり、二重加入を防ぐ仕組みがある。
一時ビザ保持者のスーパー還付(DASP)
ワーキングホリデー・留学・就労ビザ等の一時ビザで働いた場合、帰国後にスーパーを全額請求できる(DASP: Departing Australia Superannuation Payment)。
ただし税金が引かれる。
| ビザ種別 | DASP税率 |
|---|---|
| Working Holiday Visa(417・462) | 65% |
| その他の一時ビザ | 35% |
ワーキングホリデービザの場合、積み立てたスーパーの65%が税として差し引かれ、手元に残るのは35%だけだ。
例えばAU$10,000(約97万円)積み立てた場合、還付されるのはAU$3,500(約34万円)。受取金額は少ないが、「放置した場合は0円」なので、帰国後は必ず申請したほうがいい。
申請方法:
- ATO公式サイトの「DASP online application」から申請
- ビザが失効または出国済みである必要がある
- オーストラリアのスーパーファンドに口座を持っていた場合、各ファンドへの申請も必要(myGovで確認可能)
- 支払いは指定の海外口座または豪州口座に振込
よくある失敗——TFNをどこかに残さないと詰む
帰国後にTaxReturnを申告しようとしても、TFNを忘れたり、使っていたメールアドレスが使えなくなったりして手続きが詰まるケースがある。
最低限保管しておくもの:
- TFN(9桁の番号)
- myGovのログイン情報
- 使っていた銀行口座番号(NAB・ANZ・Commonwealth等)
- Superファンドのファンド名とメンバー番号
帰国前に、これらをメモ・スクリーンショットで手元に残しておくことを強く推奨する。
まとめ
| 手続き | タイミング | 方法 |
|---|---|---|
| TFN取得 | 来豪直後 | ATO公式サイト |
| Tax Return | 毎年10月31日まで | myGov(ATO連携) |
| DASP(スーパー還付) | 帰国・ビザ失効後 | ATO公式サイト |
参考情報
- ATO(Australian Taxation Office): ato.gov.au
- TFN申請: ato.gov.au/individuals-and-families/tax-file-number
- DASP申請: ato.gov.au/individuals-and-families/super-for-individuals-and-families/super/departing-australia-superannuation-payment
- myGov: my.gov.au