カナダ先住民族と和解プロセス——在住外国人の視点
カナダに住むと「Reconciliation(和解)」という言葉に頻繁に出会います。先住民族の歴史と、現在進行中の和解プロセスを在住外国人の視点から考えます。
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カナダで会議やイベントが始まるとき、こんな言葉が述べられることがある。「私たちは今日、__族の伝統的な土地に集まっています(We are gathered today on the traditional territory of the __ Nation)」。これを「Territory Acknowledgement(領土承認)」という。
在住して最初に聞いたとき、意味がわからなかった。調べてみると、カナダが抱える先住民族との歴史と現在進行形の和解プロセスの縮図がここにあった。
カナダの先住民族
カナダには大きく「First Nations(ファースト・ネーションズ)」「Métis(メティ)」「Inuit(イヌイット)」の3グループからなる先住民族が居住している。カナダ統計局の2021年国勢調査によると、先住民族の人口は約177万人で、カナダ総人口の約4.9%を占める。
問題の中心にあるのが「Residential Schools(寄宿学校制度)」だ。19世紀から1990年代まで、政府とカトリック教会等が先住民族の子どもを家族から引き離し、文化・言語を剥奪することを目的とした学校に収容した。2021年、カナダ各地の旧寄宿学校跡地で子どもの遺骨が相次いで発見され、改めて大きな衝撃を与えた。
和解プロセスの現在
2015年、真実和解委員会(Truth and Reconciliation Commission)が94項目の「行動要求(Calls to Action)」を提出した。うちどれだけ実施されたかをトラッキングするサイト(ircacanada.ca)があり、2024年時点で完了は少数にとどまる。
毎年9月の最終月曜は「National Day for Truth and Reconciliation(オレンジシャツデー)」として国民の祝日に制定(2021年から)。オレンジ色のシャツを着て出勤・登校する人が増えている。
在住外国人はどう関わるか
「自分は移民・在住者であり、カナダの歴史的加害とは関係がない」という受け取り方もある。一方で「カナダの土地に住む者として、歴史を知ることは義務に近い」という考え方も根強い。どちらが正しいかより、「その問いを持ち続けること」を大切にする姿勢がカナダ社会では評価される。
Territory Acknowledgementを聞いたとき、それが形式的な慣習なのか、実質的な意味を持つ行為なのかは、聞く側がどれだけ背景を知っているかで変わる。