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カナダの食料品価格はなぜ高いのか——寡占市場と北国の物流コスト

カナダの食料品市場はLoblaws・Metro・Empire(Sobeys)の3社で約60%を支配。寡占構造と物流コストが生む高価格の実態。

2026-05-02
食料品物価スーパー生活費

この記事の日本円換算は、1CAD≒112円で計算しています(2026年4月時点)。為替は変動するので、現地通貨(CAD)の金額を基準にしてください。

2023年、カナダの食料品インフレ率は前年比7〜8%に達した。しかも、同時期のアメリカの食料品インフレ率を上回っていた。国境の南側で同じブランドの商品がカナダより3〜4割安く売られている現実に、バッファロー近郊に住むカナダ人は日常的に直面している。

3社で市場の6割を握る寡占構造

カナダの食料品小売市場はLoblaws(約28%)、Sobeys/Empire(約22%)、Metro(約11%)の3社で約60%を占める。G7の中でこれほど食料品小売が集中している国はほかにない。

それぞれが複数のブランドを持っている。LoblawsはNo Frills・Shoppers Drug Mart・T&Tスーパーマーケット。EmpireはSobeys・FreshCo・Farm Boy・Safeway。MetroはMetro・Food Basics・Jean Coutu。一見選択肢があるように見えて、レジの向こう側は同じ3社のどれかだ。

パン価格カルテル——14年間の値段操作

2017年、Loblawsが自ら「2001年から2015年まで14年間にわたり、業界ぐるみでパン価格を操作していた」と公表した。パン1斤あたり推定CAD$1.50(約168円)の上乗せがあったとされる。Loblawsは顧客にCAD$25(約2,800円)のギフトカードを配布して事態の収拾を図ったが、集団訴訟は現在も進行中だ。

食料品の価格に対するカナダ国民の不信感は、このスキャンダル以降さらに深まった。

具体的な価格——トロントのスーパーで

2025年後半のトロント市内の一般的なスーパーマーケットでの価格感は以下の通り。

  • 牛乳(4L): CAD$6.50〜7.50(約728〜840円)
  • 食パン(675g): CAD$3.50〜5.00(約392〜560円)
  • 卵(12個入り): CAD$4.50〜6.00(約504〜672円)
  • 鶏むね肉(1kg): CAD$15〜18(約1,680〜2,016円)

日本のスーパーで買い物する感覚とは大きくずれる。特に乳製品はカナダの供給管理制度(Supply Management)で国際価格より高く設定されており、輸入品との価格競争が制限されている。

北部コミュニティ——食料品が2〜3倍になる地域

問題がさらに深刻なのは、道路や鉄道が通っていない北部の先住民コミュニティだ。ヌナブト準州の食料品価格は南部の2〜3倍。イカルイットでスイカ1個がCAD$30(約3,360円)、オレンジジュース2LがCAD$20(約2,240円)という報告もある。

連邦政府はNutrition North Canada(NNC)という補助金プログラムで北部コミュニティへの食料品配送コストを一部負担しているが、補助金が小売価格に十分反映されていないという批判は根強い。2023年の会計検査院報告では、補助金が消費者に届いているかの検証が不十分だと指摘された。

変化の兆し

Costco、Walmart、そして近年進出したNo Nameブランド(Loblaws系)の低価格路線が一定の対抗勢力になっている。オンタリオ州やBC州では地元の独立系食料品店やファーマーズマーケットの利用も増えつつある。

ただし構造的な問題——3社寡占・供給管理制度・広大な国土の物流コスト——は短期的には変わらない。カナダに住む以上、食費は東京より高くなると想定して生活設計をした方がいい。

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