カナダの医療は無料だが、6ヶ月待つことがある
カナダの公的医療制度は原則無料。しかし「無料」の代償は待ち時間だ。GPを持てない在住者の実態、緊急時の対応、日本人が知るべき医療システムの現実。
この記事の日本円換算は、1CAD≒110円で計算しています(2026年4月時点)。為替は変動するので、現地通貨の金額を基準にしてください。
足首の痛みが続いている。整形外科に行きたい。カナダでその手続きを踏むと、専門医の予約まで3〜6ヶ月かかることがある。「無料の医療」には、時間というコストがある。
カナダの公的医療制度の仕組み
カナダの医療制度は「ユニバーサルヘルスケア」と呼ばれ、カナダ市民・永住者・就労ビザ保持者(一定条件)を対象に、基本的な医療サービスを自己負担なしで提供する。財源は税金だ。
各州が独自の医療保険プログラムを運営しており、ブリティッシュコロンビア州はMSP(Medical Services Plan)、オンタリオ州はOHIPと呼ばれる制度が対応する。新規到着者は通常、居住開始から3ヶ月後に適用が始まる(州による)。
GP(かかりつけ医)問題
カナダの医療アクセスにおける最大の問題は、GP(General Practitioner、一般開業医)不足だ。
カナダのGPに新患として登録しようとすると、「現在新規患者を受け付けていない」という答えが返ってくることが多い。BC州やオンタリオ州では200万人以上がGPを持てていないという報告がある(カナダ家庭医学会の統計)。
GPなしで生活する場合、体調が悪くなるたびに「ウォークイン・クリニック(予約不要の診療所)」に行くことになる。ウォークインクリニックは待ち時間が1〜3時間になることもあるが、料金は公的保険の範囲内で無料だ。
専門医への道
カナダの医療はGP→専門医という紹介制度が基本だ。自分で直接専門医に予約することはできず、まずGPの診察を受けて紹介状をもらう必要がある。
専門医の予約待ち時間は、診療科や地域によって異なる。Canadian Institute for Health Information(CIHI)のデータによると、GPから専門医への紹介からの待ち時間の中央値は数週間〜数ヶ月に及ぶケースが多い。整形外科・眼科・皮膚科などは特に長くなりやすい。
緊急性があれば「urgent referral(緊急紹介)」として早期対応されるが、そうでない場合は数ヶ月待つのが現実だ。
緊急時はER
生命の危機に関わる症状の場合はER(救急)に直行する。カナダのERはトリアージ(優先度判定)が厳格で、重症者が先に診てもらえる。軽症で行くと数時間待ちになることもある。
緊急でない症状でERに行くのは、混雑を増加させる行為として医療従事者に嫌がられるため、状況の判断が必要だ。
歯科・眼科は自己負担
カナダの公的医療制度は歯科・眼科をカバーしない(一部の州で子供向けの補助あり)。
歯科定期健診と cleaning(クリーニング)でCAD150〜250(約16,500〜27,500円)が目安。虫歯治療は1本CAD150〜400(約16,500〜44,000円)になることもある。
雇用主が提供する「グループベネフィット」に歯科・眼科保険が含まれることが多く、就職後はこれで対応できる。個人での加入も可能で、月CAD50〜100程度の製品がある。
在住者の対処法
渡航3ヶ月前以降にGP探しを早めに始める(ウェイティングリストに入る)、ウォークインクリニックの場所を把握しておく、歯科はグループ保険が始まるまで自費の準備をする——この3点が基本的な準備だ。
「日本のように翌日に専門医に行ける」という感覚は手放す必要がある。カナダの医療は無料だが、時間という別のコストを支払う制度だ。