電気料金の請求書に「Hydro」と書いてある理由——カナダの電力構造と州別料金差
カナダでは電力会社を「Hydro」と呼ぶ。水力発電が9割を占めるケベック州と石油依存のアルバータ州で電気代が3倍違う構造を、在住者向けに解説。
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カナダに来て最初の電気料金の請求書を見ると、「Hydro」という単語が目に入る。BC Hydro、Ontario Hydro、Hydro-Québec——電力会社の名前にことごとく「Hydro」がつく。水道料金の話かと思ったら、電気の話だ。
カナダの電力の約60%は水力発電で賄われている。この比率は世界的に見ても異例に高い。だから「電気=Hydro」が定着した。
州別の電気料金格差
カナダの電気料金は州によって大きく異なる。電源構成と規制方式の違いが、そのまま料金差になって現れる。
ケベック州: カナダで最も電気代が安い。水力発電が発電量の約95%を占め、州営のHydro-Québecが独占供給。住宅用の料金は1kWhあたり約$0.07(約7.8円)程度。暖房を電気でまかなっても、冬の月額は$150〜$250(約1.68万〜2.8万円)程度に収まることが多い。
BC州: こちらも水力発電が主力で、料金は比較的安い。BC Hydroが供給し、1kWhあたり約$0.10〜$0.13(約11.2〜14.6円)程度の段階料金制。
オンタリオ州: 原子力・水力・天然ガスのミックス。「Time-of-Use(時間帯別料金)」が導入されており、ピーク時間帯(平日夕方)は1kWhあたり$0.15〜$0.18程度、オフピーク(夜間・週末)は$0.08程度。洗濯や食洗機は夜間に回すのが合理的だ。
アルバータ州: 天然ガスと石炭が主力。規制緩和された市場で、電力小売業者を自分で選ぶ仕組み。固定料金と変動料金のプランがあり、変動料金は市場価格に連動するため、冬場に跳ね上がることがある。
「電気代」の内訳を読む
カナダの電気料金の請求書は、日本のように単純ではない。
- Electricity Charges: 使った電力量に対する料金
- Delivery Charges: 電力を送る送配電網の利用料
- Regulatory Charges: 電力市場の運営コスト
- Debt Retirement Charge(オンタリオ州、過去に存在): 過去の電力公社の負債返済費用
実際の「電気を使った分」の料金は全体の40〜60%程度で、残りは送配電やら規制やらの付帯費用だ。「なぜ使用量が少ないのに請求額が高いのか」と感じたら、内訳を確認する価値がある。
冬の暖房費
カナダの冬は暖房費が生活費を大きく左右する。暖房方式は地域によって異なる。
天然ガス暖房(アルバータ・オンタリオ): 電気料金とは別に天然ガスの請求が来る。冬場は月$150〜$300(約1.68万〜3.36万円)程度。
電気暖房(ケベック・大西洋岸): ケベックは電気代が安いため、電気暖房でも比較的負担が小さい。ただし築年数の古いアパートは断熱性が低く、電気暖房をフル稼働させると月額が跳ね上がる。
暖房費込みの物件: 賃貸物件の中には「Heat Included(暖房費込み)」を売りにしているものがある。ケベック州では大家が暖房費を負担する物件が多い。冬の出費を予測しやすいので、物件選びの際にチェックするポイントだ。
Equal Payment Plan
冬に暖房費が集中する問題を緩和するため、多くの電力・ガス会社が「Equal Payment Plan(均等払いプラン)」を提供している。年間の推定使用量を12で割り、毎月同額を支払う仕組みだ。冬に$300の請求が来るのではなく、年間を通して月$130程度で均す。
この仕組みを知らずに冬を迎えると、最初の暖房シーズンで請求額に驚くことになる。入居後すぐに電力会社に連絡してEqual Payment Planに切り替えておくのが得策だ。