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ルーニーとトゥーニー——カナダの硬貨が教える国のアイデンティティ

カナダの1ドル硬貨は「ルーニー」、2ドル硬貨は「トゥーニー」と呼ばれる。アビの鳴き声が国の通貨の名前になった経緯と、硬貨に刻まれたカナダの自画像を読み解く。

2026-05-23
通貨文化デザイン歴史

この記事の日本円換算は、1CAD≒112円で計算しています(2026年4月時点)。為替は変動するので、現地通貨(CAD)の金額を基準にしてください。

カナダの通貨を「Loonie(ルーニー)」と呼ぶ人がいたら、ドルの別名ではない。1ドル硬貨のことだ。裏面にLoon(アビ)という水鳥が刻まれているから「ルーニー」。2ドル硬貨は「Two + Loonie」で「Toonie(トゥーニー)」。通貨の愛称が鳥の鳴き声に由来する国は、おそらく世界でカナダだけだ。

なぜアビなのか

1987年に1ドル硬貨が導入されたとき、本来の裏面デザインは航海をテーマにしたものだった。だが製造用の金型が輸送中に紛失(盗難の可能性もある)し、急遽バックアップデザインのアビが採用された。

アビはカナダの湖で最もよく見られる水鳥で、その鳴き声は「カナダの荒野の音」として国民に親しまれている。オンタリオ州の公式州鳥でもある。偶然から生まれたデザインが、結果的にカナダのアイデンティティを象徴するものになった。

1ドル紙幣の廃止

ルーニーの導入と同時に1ドル紙幣は段階的に廃止された。理由は耐久性だ。紙幣の寿命は約1〜2年、硬貨は20年以上。政府の試算では、硬貨への切り替えで年間約$27 million(約30億円)のコスト削減になった。

2ドル紙幣もトゥーニーの導入(1996年)で廃止された。つまりカナダで最小額の紙幣は$5だ。

硬貨のデザインに刻まれた動物たち

カナダの硬貨はどれも動物がモチーフだ。

  • 1セント(廃止): メープルリーフ(植物だが)
  • 5セント: ビーバー
  • 10セント: ブルーノーズ号(スクーナー船)
  • 25セント: カリブー(トナカイ)
  • $1: アビ
  • $2: ホッキョクグマ

ビーバー、カリブー、ホッキョクグマ、アビ。国旗に動物が描かれていないのに、硬貨には動物園のように生き物が並ぶ。国土の大部分が手つかずの自然であるカナダにとって、野生動物は国のアイデンティティそのものだ。

トゥーニーの技術——バイメタル硬貨

トゥーニーは中心がアルミ青銅、外周がニッケルという二色の金属で構成されている。これは偽造防止のための技術だ。導入当初は「中心と外周が分離する」という不良品が話題になったが、現在は改善されている。

ちなみに、トゥーニーを冷凍庫に入れると中心部分がポップアウトするという都市伝説がある。実際にはかなりの力が必要で、日常的に起こることではない。

Loonie経済——ルーニーと原油価格

カナダドルは国際金融市場で「commodity currency(資源通貨)」に分類される。原油価格が上がるとカナダドルも上がり、下がると連動して下がる。

「ルーニーが下がった」という表現をニュースで聞いたら、それは原油市場の動向を反映していることが多い。アルバータ州のオイルサンドがカナダの輸出の柱であるため、鳥の名前が付いた通貨が石油の値段で上下するという不思議な構造ができている。

チップと硬貨

カナダでチップを払うとき、ルーニーやトゥーニーを何枚か置くことがある。$15のランチに$3のチップ(20%)ならトゥーニー1枚とルーニー1枚。キャッシュレス化が進んでカード払いのチップが増えたとはいえ、硬貨でチップを渡す場面はまだある。

カナダの硬貨は、手のひらに乗るサイズの国家論だ。どの動物を選び、どのデザインを廃止し、何を残すか。そこにカナダという国が「自分たちは何者か」を語る姿勢が見える。

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