気温は摂氏、身長はフィート——カナダの単位がちぐはぐな理由
カナダは公式にはメートル法だが、日常では身長や体重をフィート・ポンドで言う人が多い。二つの単位系が混在する暮らしから、隣国アメリカとの関係と移行の難しさを読み解く。
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カナダで暮らすと、単位の使い方に頭が混乱する。天気予報の気温は摂氏。道路の速度標識はキロメートル。ところが、人の身長を聞くと「5フィート8」と返ってくる。体重はポンド。料理のレシピはカップとオンスが混じる。一つの国で、二つの単位系が当たり前に同居している。
公式にはカナダはメートル法の国だ。それなのに、なぜ日常会話ではヤード・ポンド法(imperial)が生き残っているのか。
上からの移行と、下に残る習慣
カナダは1970年代頃から公式にメートル法へ移行した。道路標識、天気予報、商品の表示などは制度として切り替わった。だから「上から」決まる領域はメートル法だ。
ところが、人の体や日常の感覚に染みついた単位は、制度の号令一つでは変わらなかった。身長や体重、料理の分量、家の広さの感覚——こうした個人的で身体的な領域には、古い単位が頑固に残った。制度は法律で変えられても、体に刻まれた感覚は世代をかけてしか変わらない。移行とは、上層から始まって下層に染み込むまでに時間がかかる現象なのだ。
隣に巨大なアメリカがいる
もう一つの大きな理由が、隣国アメリカの存在だ。アメリカはヤード・ポンド法を使い続けている。経済も文化も深くつながったカナダは、アメリカの単位の影響を絶えず受ける。アメリカの製品、レシピ、テレビ番組が日常に流れ込めば、フィートやポンドも一緒に入ってくる。
完全にメートル法へ振り切れないのは、巨大な隣人との結びつきが強すぎるからだ。カナダの単位のちぐはぐさは、独自の制度を持ちながらアメリカの引力から逃れられない、この国の立ち位置の縮図でもある。
在住者の実用メモ
カナダで生活するなら、両方の単位に少し慣れておくと便利だ。気温と距離はメートル法、自分の身長・体重を聞かれたらフィートとポンドでも答えられるようにしておく。スーパーの肉や野菜の値段がポンド単位で表示されることもある。料理のレシピも、出典によって単位が変わる。
最初は面倒に感じる。だが、二つの単位を行き来できるようになると、カナダがアメリカと世界の両方を向いている国であることが、肌で分かってくる。ちぐはぐな単位系は、不便であると同時に、この国がどんな歴史と地理の上に立っているかを毎日教えてくれる教材でもある。