カナダで部屋を借りるときの「敷金」事情——州によって全く違うルールを整理する
カナダの賃貸では敷金(security deposit)の上限・返還ルール・敷金の可否が州ごとに大きく異なる。在住日本人が入居時にトラブルを避けるための基本を、2026年時点の制度として解説する。
この記事の日本円換算は、1CAD≒114円で計算しています(2026年6月時点)。為替は変動するので、現地通貨(CAD)の金額を基準にしてください。
カナダで初めて部屋を借りる日本人が驚くのは、日本でいう「敷金」の扱いが州によってまるで違うことだ。ある州では家賃半月分しか取れず、別の州では「家賃の前払い」という別の名目でお金を預ける。同じ国とは思えないほどルールが分かれている。
賃貸の規則はカナダでは州ごとの管轄で、全国一律ではない。だからまず「自分の住む州ではどうなっているか」を確認するのが出発点になる。
「敷金」の意味が州で違う
オンタリオ州では、いわゆる損傷に備えた敷金(damage deposit)を取ることが原則できない。代わりに、家賃1か月分の「前払い(last month's rent deposit)」を求められるのが一般的だ。これは退去時の最後の月の家賃に充当される性質のもので、損傷の補修には使えない。
一方、BC州では家賃の半月分を上限とした security deposit が認められ、ペットがいる場合は追加でペット敷金を取れる。同じ「敷金」という言葉でも、上限も使途もまるで違う。額の感覚をつかむために円換算すると、家賃1,500CADの部屋なら半月分は750CAD(約8万5,500円)になる。
返ってくるかどうかが争点
入居時より退去時のほうがトラブルは多い。敷金が返ってこない、あるいは「修繕費」として勝手に差し引かれる——これは在住者がよく直面する問題だ。
防御策はシンプルだ。入居時に部屋の状態を写真と動画で記録し、傷や汚れを一覧にして大家と共有しておく。多くの州では入退去時の状態点検(condition inspection)の手続きが定められており、これを残しておくと退去時に「もとからあった傷」を証明できる。
困ったときの相談先
敷金をめぐって大家と折り合わない場合、各州には賃貸紛争を扱う公的な機関がある。オンタリオなら Landlord and Tenant Board、BCなら Residential Tenancy Branch のような窓口だ。裁判ではなく行政手続きで解決を図れる仕組みで、英語に不安があっても申し立てはできる。
ここで挙げた制度は2026年時点のもので、各州が随時見直すため変更され得る。契約前に必ず自分の州の最新の賃貸規則を確認したい。
在住者へのまとめ
敷金トラブルは「知らなかった」で損をしやすい領域だ。州ごとに上限と返還ルールが違うこと、入居時の記録が退去時の盾になること、公的な相談窓口があること——この三つを押さえておくだけで、立場が大きく変わる。賃貸の規則は弱い側を守るために整備されてきた制度だと知っておくと、いざというとき強く出られる。