カナダのRRSPとTFSA——非課税投資口座の使い分け
カナダの2大非課税投資口座RRSP(退職貯蓄)とTFSA(非課税貯蓄)。それぞれの仕組み、拠出上限、在住日本人にとっての使い分け方を解説します。
この記事の日本円換算は、1CAD≒112円で計算しています(2026年5月時点)。為替は変動するので、現地通貨(CAD)の金額を基準にしてください。
カナダに住んで働き始めると、職場の人事や銀行の窓口で「RRSPとTFSA、どっちに入れる?」と聞かれます。日本にはこの2つに直接対応する制度がないため、違いがわかりにくい。しかしカナダの資産形成において、この2つの口座の使い分けは最も基本的な判断のひとつです。
RRSPの仕組み
RRSP(Registered Retirement Savings Plan=登録退職貯蓄プラン)は、退職後の生活資金を積み立てるための税制優遇口座です。日本のiDeCo(個人型確定拠出年金)に近い仕組みです。
拠出時: 拠出額が所得控除になる。年収$80,000の人が$10,000をRRSPに拠出すると、課税所得は$70,000に減少する。税率30%なら$3,000の節税効果
運用中: 口座内の運用益(配当、利子、キャピタルゲイン)は非課税
引き出し時: 引き出し額が所得として課税される。退職後は所得が下がるため、現役時代より低い税率で引き出せる——というのが基本的な戦略
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 年間拠出上限 | 前年の所得の18%(最大$31,560、2024年) |
| 未使用枠の繰り越し | 可能(無期限に繰り越せる) |
| 引き出し | いつでも可能だが、引き出し額が所得として課税される |
| 年齢制限 | 71歳末までに解約またはRRIFに変換が必要 |
TFSAの仕組み
TFSA(Tax-Free Savings Account=非課税貯蓄口座)は、2009年に導入された口座で、日本の旧NISAに近い仕組みです。
拠出時: 所得控除なし。税引き後の収入から拠出する
運用中: 口座内の運用益は非課税
引き出し時: 引き出し時も非課税。引き出した分の拠出枠は翌年に復活する
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 年間拠出上限 | $7,000(2024年) |
| 累積拠出上限 | 18歳以降の各年の上限合計(2009年から在住の場合、2024年で$95,000) |
| 未使用枠の繰り越し | 可能 |
| 引き出し | いつでも非課税 |
| 年齢制限 | なし |
どちらを優先すべきか
「RRSPが先かTFSAが先か」は、カナダのパーソナルファイナンスで最も議論されるテーマのひとつです。基本的な判断基準は以下の通りです。
RRSPを優先すべきケース:
- 現在の税率が高い(年収$55,867以上で連邦税率20.5%〜)
- 退職後の収入が現在より大幅に下がる見込み
- 雇用主がRRSPマッチング(会社の拠出)を提供している場合は、マッチング分まで必ず拠出する(実質100%リターン)
TFSAを優先すべきケース:
- 現在の税率が低い(年収が低い、カナダ在住初期など)
- 将来の引き出し時期が決まっていない(住宅購入、緊急資金など柔軟に使いたい)
- 短期〜中期の貯蓄目的
在住日本人の注意点
日本人がカナダに移住した場合、いくつかの特有の注意点があります。
TFSAの拠出枠の起算: TFSAの累積拠出上限は、18歳以降にカナダの税務上の居住者だった年数分しか加算されません。2024年に移住した場合、初年度の上限は$7,000のみ。「2009年からの累積$95,000」は、2009年からずっとカナダの居住者だった人の数字です。
日本との二重課税: RRSP内の運用益はカナダでは非課税ですが、日本の税法上はどう扱われるか——日加租税条約で一定の取り決めがあります。永住予定がなく、将来日本に帰国する可能性がある場合は、帰国時のRRSP解約に伴う課税計画が必要です。カナダの税理士に加えて、日本の国際税務に詳しい専門家への相談を検討する価値があります。
FHSA(First Home Savings Account): 2023年に新設された住宅購入用の非課税口座。年間$8,000、生涯$40,000まで拠出可能で、RRSPのように所得控除があり、TFSAのように住宅購入時の引き出しが非課税。初めての住宅購入を検討しているなら確認しておきたい制度です。
口座の開設方法
RRSPとTFSAは、カナダの大手銀行(RBC、TD、BMO、Scotiabank、CIBC等)やオンライン証券(Questrade、Wealthsimple等)で開設できます。
銀行窓口で開設する場合、GIC(Guaranteed Investment Certificate=定期預金に近い商品)やミューチュアルファンドを勧められることが多いですが、手数料が高い(MER: Management Expense Ratio が2%前後)。低コストのインデックスファンドやETFに投資するなら、QuesttradeやWealthsimpleのようなオンライン証券の方が手数料が低く済みます。
資産形成は早く始めるほど複利の効果が大きくなります。カナダに移住した初年度から、少額でもRRSPとTFSAへの拠出を始めておくことが、長期的には大きな差を生みます。