Kaigaijin
海外在住日本人のメディア
生活・文化

冬だけアメリカに移住する高齢者たち——スノーバードが破るカナダ医療保険の盲点

カナダの「スノーバード」は冬をフロリダやアリゾナで過ごす高齢者。州の健康保険を維持するための居住要件、海外旅行保険の選び方、税務上の注意点を解説。

2026-05-16
スノーバード高齢者医療保険越冬

この記事の日本円換算は、1CAD≒112円で計算しています(2026年4月時点)。為替は変動するので、現地通貨(CAD)の金額を基準にしてください。

毎年10月になると、カナダの高速道路をフロリダやアリゾナのナンバープレートをつけたRV(キャンピングカー)が南下し始める。カナダの冬をフロリダの太陽の下で過ごす「Snowbird(スノーバード)」と呼ばれる人々だ。推定で毎年50万〜100万人のカナダ人が冬季にアメリカで長期滞在しているとされる。

リタイヤした高齢者が中心だが、リモートワークの普及で若い世代のスノーバードも増えている。

医療保険の居住要件

スノーバードが最も気をつけなければならないのが、州の健康保険(Provincial Health Insurance)の居住要件だ。

オンタリオ州(OHIP): 12ヶ月のうち153日以上オンタリオ州に居住することが条件。つまり、カナダ国外に滞在できるのは最大212日。7ヶ月以上フロリダにいると、OHIPの資格を失うリスクがある。

BC州(MSP): 12ヶ月のうち少なくとも6ヶ月はBC州に居住する必要がある。

ケベック州(RAMQ): 12ヶ月のうち183日以上ケベック州に居住する条件。

居住要件を満たさず保険資格を失った場合、再取得までに3ヶ月の待機期間がある州もある。その間にカナダ国内で緊急医療を受けると、全額自己負担になる。

海外旅行保険の必須性

カナダの州の健康保険は、アメリカで発生した医療費をごく一部しかカバーしない(カバー額がアメリカの医療費に対して桁違いに低い)。フロリダで心臓発作を起こしてERに運ばれたら、$100,000以上の請求が来る可能性がある。

スノーバードにとって海外旅行医療保険(Out-of-Province / Out-of-Country Medical Insurance)は必須だ。保険料は年齢と滞在期間によって大きく異なる。70歳・6ヶ月滞在で$1,500〜$3,000(約16.8万〜33.6万円)程度が目安だが、持病がある場合はさらに高くなるか、引受を拒否されることもある。

Pre-existing Condition(既往症)の告知: 保険申請時に既往症を正確に告知しないと、いざという時に保険金が支払われない。「安定していた」持病が旅先で悪化した場合、「安定期間」の定義で保険会社と揉めるケースがある。

アメリカ側の滞在制限

カナダ人がアメリカに滞在できるのはB-2ビザなしの場合、原則として6ヶ月(183日)以内だ。6ヶ月を超えるとアメリカでの税務申告義務が発生する可能性がある(Substantial Presence Testによる)。

多くのスノーバードは5ヶ月程度で帰国し、カナダの居住要件とアメリカの滞在制限の両方をクリアしている。日程管理が甘いと、どちらの国でも問題が生じる。

日本人在住者への示唆

スノーバードはカナダの高齢者の現象だが、日本人在住者にも関連する話がある。

一時帰国が長引いた場合にも、州の健康保険の居住要件に抵触するリスクがある。「3ヶ月の一時帰国を年に2回」というパターンだと、年間6ヶ月がカナダ国外になり、居住要件ギリギリだ。

冠婚葬祭や家族の介護で予定より帰国が長くなった場合、州の保険を失う可能性がある。出国前に自分の州の居住要件を確認し、日数を管理しておくことが自衛になる。

カナダの「無料医療」は、カナダに住んでいる人のためのものだ。物理的にカナダにいない期間が長くなると、その恩恵は失われる。

コメント

読み込み中...