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カナダの税制——連邦税+州税の二重構造と海外資産T1135申告義務

カナダ居住者は全世界所得を申告する義務がある。連邦税(15〜33%)に州税が加わり、海外資産CAD$100,000超ではT1135の提出が必要。TFSA・RRSPの節税活用と日加租税条約のポイントも整理する。

2026-04-15
カナダ税金T1135TFSARRSPCRA日加租税条約確定申告

この記事の日本円換算は、1CAD≒110円で計算しています(2026年4月時点)。為替は変動するので、現地通貨(CAD)の金額を基準にしてください。

カナダに住み始めた瞬間から、全世界の所得に対してカナダへの申告義務が発生する。日本の銀行口座、日本株、日本の不動産からの家賃収入——これらすべてがカナダの税務当局(CRA: Canada Revenue Agency)への申告対象になる。特に注意が必要なのが、海外資産がCAD$100,000を超えた場合に提出が求められる「T1135」だ。

カナダ居住者と税務上の義務

カナダの税制は「居住地主義(Residence-Based Taxation)」を採用している。税務上の居住者(Resident)として認定されると、全世界所得を申告する義務が生じる。

居住者かどうかの判定は機械的な日数計算ではなく、「生活の重心がカナダにあるか」という事実認定だ。主な判断材料:

  • カナダに住居がある
  • 配偶者・子がカナダにいる
  • カナダの銀行口座・運転免許・健康保険証がある
  • カナダで雇用されている

カナダに引っ越して就労した時点で、ほぼ全員が税務上の居住者になる。

連邦税率:5段階の累進課税

2024年課税年度の連邦所得税率:

課税所得(CAD)税率
$55,867以下15%
$55,868〜$111,73320.5%
$111,734〜$154,90626%
$154,907〜$220,00029%
$220,001以上33%

これに州税が加わる。オンタリオ州の最高税率は13.16%、ブリティッシュコロンビア州は20.5%、アルバータ州は15%、ケベック州は21.25%。

連邦+州の合算最高税率はケベック州で約54%、アルバータ州で約48%と差が大きい。

T1135——海外資産CAD$100,000超で申告義務

カナダ在住で海外(日本含む)に特定の金融資産を持ち、その年中のいずれかの時点での合計コスト(取得価額)がCAD$100,000(約1,100万円)を超える場合、**Form T1135(Foreign Income Verification Statement)**の提出が必要だ。

対象となる「Specified Foreign Property(特定海外財産)」:

  • 海外の銀行口座(普通預金・定期預金)
  • 海外の株式・投資信託・債券
  • 海外の不動産(本人が使用していない投資用物件)

対象外:

  • 本人が居住・使用している海外不動産
  • 海外年金(外国政府からの年金)
  • 事業目的で使用している海外資産

T1135はForm T1(個人確定申告書)に添付して提出する。申告期限は同じく4月30日。

アメリカのFBAR($10,000以上の海外口座残高が対象)と混同されがちだが、T1135は残高ではなく「取得コスト$100,000超」が基準である点に注意が必要だ。

提出漏れへのペナルティは$25/日(最大$2,500/年)で、故意の場合は額が増加する。

RRSP・TFSAの節税

RRSP(Registered Retirement Savings Plan): 拠出額がその年の課税所得から控除できる。2024年の拠出上限は前年課税所得の18%(上限$31,560)。引き出し時に所得課税される仕組みで、現役時代(高い税率)の控除→退職後(低い税率)での引き出しという税率差を活用する。

TFSA(Tax-Free Savings Account): 拠出時の控除はないが、運用益・引き出しが非課税。2024年の年間拠出上限は$7,000。カナダ居住者として18歳以上で過ごした年数分だけ枠が積み上がる。

制度拠出時控除運用益引き出し年間上限(2024)
RRSPあり非課税(引出時に課税)課税$31,560(所得の18%上限)
TFSAなし非課税非課税$7,000

確定申告(T1)の流れ

申告書: T1 General(個人確定申告書) 提出期限: 毎年4月30日(自営業は6月15日、ただし納税は4月30日まで)

雇用主からT4(給与明細年次版)、金融機関からT5(利子・配当)などのスリップが届く。これらをTurboTax CanadaやH&R Block Canadaなどのソフトウェアに入力する形が一般的だ。

海外所得がある場合は外国税額控除(Foreign Tax Credit)を活用して二重課税を回避できる。

日加租税条約の活用

日本とカナダは租税条約を締結している(1986年署名、その後改定)。主なポイント:

  • 日本の年金をカナダで受け取る場合の源泉課税軽減
  • 配当への源泉徴収税率の軽減(通常15%→条約税率)
  • 同一所得への二重課税を外国税額控除で調整

移住初年度や帰国年度は「税務上どちらの国の居住者か」が微妙な期間が生じる。この場合は税務専門家(Tax Advisor/会計士)への相談が現実的な選択肢だ。特にT1135の対象になる資産規模なら、専門家費用に見合う節税・リスク回避の効果がある。


参考: Canada Revenue Agency「T1135 Foreign Income Verification Statement」、CRA「Individual Income Tax Rates」、CRA「RRSP・TFSA」、財務省「日加租税条約テキスト」(2026年4月時点)

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