カナダの携帯料金はなぜ世界一高いのか——3社寡占の通信市場
カナダの携帯料金はOECD諸国で最高水準。Rogers・Bell・Telusの3社寡占が生む価格構造と、近年の変化を解説。
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カナダに来て最初に驚くのが携帯電話の料金だ。50GBのプランで月額CAD$75〜85(約8,400〜9,520円)。日本で同等のデータ量を大手キャリアで契約しても月額4,000〜5,000円程度。フランスでは€20〜30(約3,300〜5,000円)で100GB以上のプランがある。カナダの通信料金はOECD諸国で最高水準に位置し続けている。
3社で87%——寡占の構造
カナダの無線通信市場はRogers、Bell(BCE)、Telusの3社で加入者シェア約87%を占める。この3社が全国に基地局を持ち、周波数帯域のオークションでも圧倒的な資金力で落札してきた。新規参入者が対抗するのは極めて難しい。
実際、過去20年で参入を試みた企業の多くが撤退または買収されている。Wind Mobile(現Freedom Mobile)はShawが買収し、そのShawを2023年にRogersが買収した。Mobilicityも2015年にRogersに吸収された。競争を促すはずの新規参入が、結果的に3社の寡占を強化する構図が繰り返されてきた。
サブブランドという選択肢
3大キャリアはそれぞれ低価格帯のサブブランドを持っている。
- Rogers: Fido、Chatr
- Bell: Virgin Plus、Lucky Mobile
- Telus: Koodo、Public Mobile
サブブランドを使うとCAD$45〜55(約5,040〜6,160円)/月で20〜50GBのプランが見つかる。ネットワーク品質は親ブランドと同じ基地局を使うため変わらない。店舗でのサポートが限定的な代わりに月額が安い。カナダ在住の日本人にはFidoやKoodoを使っている人が多い。
広大な国土とインフラコスト
カナダの国土面積は世界第2位の998万km²。人口密度は1km²あたり約4人。これだけ広い土地にネットワークを張り巡らせるインフラコストが、料金が高い理由のひとつとして3社は主張してきた。
ただし、オーストラリアも同程度の人口密度でありながら、携帯料金はカナダより安い。「国土が広いから仕方ない」という説明だけでは、OECD最高水準の料金を正当化できない。
2022年7月——Rogers全国12時間障害
2022年7月8日、Rogersのネットワークが全国で約12時間にわたって停止した。携帯電話だけでなく、インターネット、デビットカード決済、さらには911緊急通報までもが影響を受けた。1,200万人以上のRogers加入者に加え、RogersのMVNOを利用する事業者の顧客も巻き込まれた。
この障害は「通信インフラが3社に集中するリスク」を国民に突きつけた。CRTC(カナダ電気通信委員会)は障害後に調査報告書を出し、キャリア間のローミング協定の義務化を検討している。
MVNO・格安プランの動き
近年、3社の寡占に変化の兆しもある。Freedom Mobile(Shaw買収後もRogersとは別ブランドで運営を義務付けられた)がCAD$50以下の無制限プランを提供し始めた。また、eSIM対応のMVNOやデータ専用SIMの選択肢も徐々に広がっている。
とはいえ、3社寡占の基本構造が崩れるには程遠い。カナダに移住・赴任する場合、携帯料金は月CAD$50〜85(約5,600〜9,520円)の固定費として生活設計に組み込んでおくのが現実的だ。