夏の3か月で大金を稼ぐ「植林の仕事」——カナダの若者の通過儀礼
カナダの奥地で苗木を植え続ける季節労働「treeplanting」は、過酷だが高収入で知られ、若者の通過儀礼になっている。この特異な仕事から、カナダの広大さと労働文化を読み解く。
この記事の日本円換算は、1CAD≒114円で計算しています(2026年6月時点)。為替は変動するので、現地通貨(CAD)の金額を基準にしてください。
カナダの大学生に「夏は何してた?」と聞くと、ときどき返ってくる答えがある。「植林(treeplanting)」。聞き慣れない仕事だが、カナダではある種の伝説的な響きを持つ。奥地のキャンプに泊まり込み、来る日も来る日も山の斜面に苗木を植え続ける。過酷だが稼げる。だから若者が挑む。
報酬は植えた本数に応じた歩合制が一般的で、慣れれば一日に数千本を植える。シーズンの数か月で学費の足しになるほどの額を稼ぐ人もいる、と語り継がれている(個人差が大きいため具体額は人による)。なぜカナダにこんな仕事が存在するのか。
国土の広さが生んだ需要
背景には、カナダの林業の規模がある。広大な森林が伐採される一方で、再植林の義務がある。だが植える場所は人里離れた奥地で、機械では効率が悪い。結局、人間が一本ずつ手で植えるのが現実的だ。広すぎる国土が、人力の季節労働という需要を生んでいる。
日本の感覚では想像しにくいスケールだ。植える現場まで車で何時間も走り、電波も届かないキャンプで寝泊まりする。仕事の過酷さは、国の広さの裏返しでもある。
過酷さが通過儀礼になる
treeplanting が若者文化の一部になっているのは、その過酷さゆえだ。虫に刺され、泥にまみれ、悪天候でも植え続ける。途中で脱落する人も多い。だからこそ「一夏やり切った」という経験は誇りになる。
人は楽な経験では結束しない。過酷さを共有した集団には、独特の絆と物語が生まれる。植林キャンプは、見知らぬ若者たちが数か月で固い仲間になる場でもある。苦労の量と思い出の濃さは比例する。
在住者・移住者の視点で
ワーキングホリデーなどでカナダに来た人の中にも、この仕事を経験する人がいる。体力勝負で、自然の中で稼げる。英語環境にどっぷり浸かれる。一方で、肉体的にも精神的にもきつく、誰にでも勧められるものではない。
それでも、カナダ人にとって植林が「若い頃の濃い思い出」として語られるのは確かだ。この国の広大な森と、そこで汗を流す若者たちの存在を知ると、カナダという国の大きさが、地図の上だけでなく労働の現場としても見えてくる。