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医療・保険

カナダの公的医療保険、『無料』の意味を正確に理解する

カナダの公的医療保険で無料になる範囲と対象外の医療項目を整理。GP待ち時間・専門医紹介システム・州ごとの違い・歯科と眼科の実態を解説。

2026-04-06
医療保険カナダGP歯科待ち時間Medicare

この記事の日本円換算は、1CAD≒114円で計算しています(2026年4月時点)。為替は変動するので、現地通貨(CAD)の金額を基準にしてください。

「カナダは医療費が無料」——移住前にこう聞いた日本人が、実際にカナダで病院にかかったときに驚くことがあります。「無料」の範囲が想像と違うからです。

カナダの公的医療保険制度(Medicare)は、連邦法(Canada Health Act, 1984年)に基づき、各州が運営しています。基本原則は「必要な医療サービスに対して、自己負担なしでアクセスできること」。ただし、「必要な医療サービス」の定義が問題です。

無料の範囲——何がカバーされるか

カバーされるもの。

  • GP(家庭医)の診察: 診察料は全額公費。自己負担ゼロ
  • 専門医の診察: GPからの紹介があれば自己負担ゼロ
  • 入院費: 公立病院での入院、手術、検査は自己負担ゼロ(個室は対象外の場合あり)
  • X線・MRI等の画像検査: 医師の指示による検査は自己負担ゼロ
  • 出産: 公立病院での出産は自己負担ゼロ

無料ではない範囲——ここで驚く

カバーされないもの。

  • 歯科: カナダの公的保険は歯科を基本的にカバーしない。虫歯治療、歯石除去、矯正すべて自費
  • 眼科: 視力検査、コンタクトレンズ、メガネは自費。白内障手術等の医療行為は対象
  • 処方薬: 入院中は無料だが、外来での処方薬は各州で対応が異なる。多くの州では自費または部分負担
  • 理学療法・カイロプラクティック: 自費
  • 救急車: 州によるが、$45〜$800程度の利用料がかかる。オンタリオ州は$45、ブリティッシュコロンビア州は$80
  • 個室・差額ベッド: 自費

歯科の実費

カナダで歯科は家計の大きな負担です。

治療内容概算費用
歯石除去(クリーニング)$150〜300(約17,100〜34,200円)
虫歯治療(詰め物1本)$150〜400(約17,100〜45,600円)
根管治療$700〜1,500(約79,800〜171,000円)
抜歯$150〜600(約17,100〜68,400円)
インプラント1本$3,000〜6,000(約342,000〜684,000円)

2024年にカナダ連邦政府が導入した「Canadian Dental Care Plan(CDCP)」は、世帯年収$90,000未満で民間歯科保険がない人を対象に、歯科治療の費用を公費で補助する制度です。ただし、外国人の永住者(PR)やワークパーミット保持者がこの制度の対象になるかは条件による。

処方薬の費用

外来の処方薬は州によって対応が異なります。

  • オンタリオ州: 25歳以下は公費カバー(Ontario Drug Benefit Program)。26歳以上は自費
  • ブリティッシュコロンビア州: Fair PharmaCare制度で所得に応じた年間上限あり
  • ケベック州: 公的薬剤保険への加入義務あり(民間保険がない場合)

風邪薬程度なら$10〜30だが、持病の薬が月$200〜500かかるケースもあります。

待ち時間——「無料」のコスト

カナダの医療で日本人が最も困惑するのが待ち時間です。

Fraser Instituteの報告(2025年版)によると、GPから専門医の診察を受けるまでの中央値は15.3週間。専門医の診察から実際の治療開始まで13.3週間。合計で約28.6週間(約7ヶ月)

州による差は大きい。

紹介〜治療の中央値
オンタリオ19.2週間
ブリティッシュコロンビア32.2週間
ケベック32.5週間
ノバスコシア49.0週間
ニューブランズウィック60.9週間

ニューブランズウィック州では、専門医の治療を受けるまでに1年以上かかることがあります。

GPの不足

そもそも、GPを見つけること自体が難しい地域があります。特に地方部では新規患者を受け付けているGPが少なく、「家庭医がいない」状態で数ヶ月〜数年過ごす人もいる。

GPが見つからない場合、Walk-in Clinic(予約不要のクリニック)を利用しますが、ここでは継続的なケアが受けにくい。毎回違う医師に診てもらうことになり、病歴の把握が浅くなるリスクがあります。

日本の医療と比べて

日本の医療制度と比較すると、カナダの制度は「入口は無料だが待つ」、日本は「入口で3割払うがすぐ診てもらえる」という違いがあります。

項目カナダ日本(3割負担)
GP/内科の診察無料1,500〜3,000円
専門医への紹介無料だが数ヶ月待ち数日〜数週間
歯科自費(高額)保険適用(3割)
処方薬州による(自費〜部分負担)3割負担
救急無料(搬送費は有料)3割負担(搬送費は無料)

日本の「保険証があればどの病院にもすぐ行ける」という利便性は、カナダにはありません。カナダでは専門医に直接行くことができず、GPの紹介が必須です(紹介状なしでは受診できない)。

民間保険は必要か

カナダの公的保険でカバーされない部分(歯科・眼科・処方薬・理学療法等)は、民間の補完保険(Extended Health Benefits)で対応するのが一般的です。

雇用されている場合、雇用主が補完保険を提供していることが多い。自営業やフリーランスの場合は自分で加入する必要があり、月$100〜300程度。

日本人が移住する場合、最低でも歯科と処方薬をカバーする民間保険に加入しておくのが現実的な選択です。「カナダは医療費無料だから保険は不要」と考えて渡航すると、歯科の急なトラブルで数十万円の出費が発生するリスクがあります。

「無料」は嘘ではないが、その範囲を正確に理解していないと、移住後に想定外の出費と不便に直面します。

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