カナダのビザ・永住権ガイド——Express Entry、PNP、家族呼び寄せ。ポイント制の現実
Express EntryのCRSスコア計算から、PNP(州別移民プログラム)、SUV(スタートアップビザ)、ワーホリから永住権へのルートまで。カナダ移民の現実を整理する。
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カナダの移民制度の設計思想は「経済的貢献ができる人を取る」だ。ポイント制(CRSスコア)が示す通り、年齢・学歴・語学力・職歴が高いほど有利になる。制度は複雑だが、自分がどのルートに近いかを把握することから始められる。
Express Entry——カナダ移民の主幹ルート
Express Entryはカナダ連邦政府が運営するオンライン移民管理システムで、熟練労働者向け永住権の中心的なルートだ。
3つのプログラムが束ねられている:
- Federal Skilled Worker(FSW): 学士以上 + 1年以上の管理職・専門職・技術職経験
- Federal Skilled Trades(FST): 認定職種の技能労働者(電気工事士・溶接工等)
- Canadian Experience Class(CEC): カナダ国内での1年以上の就労経験者
プロフィールをExpressEntryに登録するとCRS(Comprehensive Ranking System)スコアが計算される。定期的に行われる「抽選(Draw)」でスコア上位者が招待状(ITA: Invitation to Apply)を受け取り、60日以内に永住権申請を提出する。
CRSスコアの主な要素
| 要素 | 最大スコア(配偶者あり) | 最大スコア(独身) |
|---|---|---|
| 年齢 | 100 | 110 |
| 学歴 | 140 | 150 |
| 英語力(IELTS) | 128 | 136 |
| フランス語力 | 50 | 50 |
| カナダ国内就労経験 | 70 | 80 |
| カナダ国内学歴 | 30 | 30 |
| 雇用主からのJob Offer | 200 | 200 |
| 州からの推薦(PNP) | 600 | 600 |
| 合計最大 | 1,200 | 1,200 |
2023〜2024年の招待状カットオフスコアは、プログラムによって460〜540点前後で推移している。フランス語話者向けや特定職種(STEM・医療等)向けのドローでは、より低いスコアでも招待される場合がある。
日本人の場合、英語力(IELTS7.0以上)と学歴・職歴のコンビネーションが重要。IELTS CLB9(Academic: 7.5平均)を確保するだけでスコアが大きく改善する。
PNP——州が独自に移民を選ぶ制度
**PNP(Provincial Nominee Program / 州別推薦プログラム)**はカナダ各州が独自に持つ移民選考制度だ。
特定の職種・技術を持つ人を州が推薦し、連邦の移民候補として認定する。ExpressEntryと連動しているストリームに推薦されると、CRSスコアに600点が加算される——事実上の合格保証に近い。
各州が独自のプログラムを持っているため、対象職種や条件が州ごとに異なる。
| 州 | 主要プログラム | 特徴 |
|---|---|---|
| ブリティッシュコロンビア(BC) | BC PNP | テック系強い。ノミネートが比較的活発 |
| オンタリオ | OINP | 最大規模。多職種 |
| アルバータ | AINP | エネルギー・医療・農業 |
| ノバスコシア | NSNP | 少数精鋭。地方配属が条件のことも |
| ケベック | QSW | フランス語要件が実質必須 |
PNPは州が求める職種に自分のスキルが合致していると非常に強力なルートになる。ただし「特定の州への居住・就労意思」を示す必要があることが多く、トロント・バンクーバーに住みたい一方でPNPはアルバータ、という場合には矛盾が生じる。
Study→Work→PRルート
カナダへの留学から永住権を目指すルートは、特に若い世代に広く使われる。
- 留学(Study Permit): カナダの認定大学・カレッジで学ぶ
- PGWP(Post-Graduation Work Permit): 卒業後、プログラム期間に応じて最大3年間の就労許可
- 就労経験を積む: カナダ国内就労経験(CEC資格)を得る
- Express Entry / PNP で永住権申請
このルートの現実的な期間は4〜7年程度。留学+就労でCRSスコアを上げ、CECで経験を積む。カナダ国内での就労経験はCRSスコアに直接加算されるため、留学先での職種選択も戦略的に考える必要がある。
IEC(International Experience Canada)——ワーキングホリデーから先へ
日本人向けのワーキングホリデービザは**IEC(International Experience Canada)**の「Working Holiday」カテゴリで申請する。
年齢条件は18〜35歳(日本の場合)、滞在期間は最大2年間、就労制限なし。年間の枠(2024年は6,500人程度)に対して抽選が行われる。
ワーホリから永住権への道は以下の流れが現実的:
- ワーホリ中に就職先を見つける
- LMIA(Labour Market Impact Assessment / 雇用主が外国人を雇う正当性の証明)付きのJob Offerを得る
- 就労ビザ(TFW / Temporary Foreign Worker)に切り替え
- 1年以上就労してCEC資格を得てExpress Entryへ
完全に標準的なルートではないが、実際にワーホリからPRを取得した日本人は少なくない。
SUV——スタートアップビザ
**SUV(Start-Up Visa Program)**はカナダ独自の移民プログラムで、イノベーティブなビジネスアイデアを持つ起業家向けに永住権への道を提供する。
条件は、カナダ政府が指定する「Designated Organization(認定組織)」——ベンチャーキャピタル、エンジェル投資家グループ、またはビジネスインキュベーター——からサポートレターを取得すること。
処理期間は12〜36ヶ月と長め。創業アイデアの評価基準は厳密ではないが、認定組織が支持するという「社会的証明」が本質的な要件になっている。技術系スタートアップを立ち上げたい人には、テック系のインキュベーター(MaRSなど)へのアプローチが一つの窓口になる。
永住権取得後の現実
カナダの永住権(PR)を取得しても維持のための条件がある。5年間のうち730日(2年分)以上カナダに居住することが必要。長期の海外出張・日本への帰国が多い人は注意が必要だ。
カナダ国籍(市民権)申請は、PR取得後5年のうち1,095日(3年分)以上の居住を条件とする。2020年以降の緩和で、PR申請前の居住も一部カウントされるようになった。カナダは二重国籍を認めているため、日本国籍を保持したままカナダ市民になれる。これはアメリカと大きく異なる点だ。
参考: Immigration, Refugees and Citizenship Canada(IRCC)「Express Entry」公式ページ、IRCC「PNP」、IRCC「Start-Up Visa Program」、IRCC「IEC Working Holiday」