スイス銀行秘密主義の歴史——かつての匿名口座と現在の自動情報交換
「スイス銀行秘密」はかつて匿名口座と脱税の温床として機能した。CRS(自動的情報交換)の導入でその時代は終わり、現在の外国人口座開設の実態を解説。
この記事の日本円換算は、1CHF≒175円で計算しています(2026年4月時点)。
「スイス銀行」という言葉は長い間、秘密・安全・脱税と結びついていた。1934年に制定された銀行法で、銀行員が顧客情報を外部に漏らすことは刑事罰の対象となり、匿名口座制度が富裕層の資産隠しに利用されてきた。
この構造が変わったのは2010年代だ。
CRS(自動的情報交換)の始まり
2018年、スイスはOECDの「共通報告基準(CRS)」に基づく自動的情報交換に参加した。これにより、外国人がスイスに持つ口座情報は、その人の居住国の税務当局に自動的に送られるようになった。
日本の税務当局(国税庁)もCRS参加国であるため、日本居住者がスイスに持つ口座は日本側に報告される。スイスに在住している間は日本の居住者ではないため直接は関係しないが、帰国後に口座を持ち続けた場合は申告義務が生じる。
今のスイス口座開設
在住外国人がスイスで銀行口座を開設するには、BパーミットまたはCパーミット等の在留資格証明が必要だ。UBS・クレディ・スイス(現UBS吸収)・ZKB(チューリッヒ州立銀行)・ポストファイナンス等が主要な選択肢で、ネオバンク(Neon・Yuh等)も利用者が増えている。
スイス居住者の口座開設は手続きが比較的スムーズで、必要書類は身分証明書・在留資格証明・住所証明(電力・通信会社の請求書等)が基本だ。
今でも「プライベートバンク」は存在する
ピクテ・ロンバー・オディエ・ジュリアス・ベア等のプライベートバンクは現在も資産管理サービスを提供しているが、最低投資額がCHF 500,000〜1,000,000(約8,750万〜1億7,500万円)以上のケースが多い。「スイス銀行の秘密口座を持つ」という文化は事実上消滅し、現在は適法な資産管理業務が中心だ。